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このブルースを聞いてくれ

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扉を開けると、吹きつける冷たい風。臨也は不潔を好まないが、屋上のタイルは決して綺麗でないにも関わらず仰向けに寝転んでいた。その姿を認めて、新羅がおかしそうに笑う。

「聞いたよ、女の子フッたんだって?」

 その声を聞いて、臨也がくるりと新羅を振りかえった。

「……なんで知ってんの」
「噂って怖いよね」

 気だるそうに起き上り、制服をぱんぱんとはたく。汚れるのが嫌なら最初から保健室なりなんなり選べばいいのにと思うが、臨也いわく人がいないほうが良いらしい。新羅にその気持ちはよく分からなかった。
 そんな臨也は、たまに女子から告白されるという中学生では割と珍しい行為を受けている。一緒に歩いている時にもそんな場面に遭遇したこともあった。新羅には心に決めた女性がいるので全く嫉妬の念も覚えないが、周りはどうかは知らない。

「まあ、色恋沙汰に首を突っ込むつもりはないけど、そのフり方は感心しないな」
「そう? 面倒だっただけなんだけど」
「なんで神様は臨也なんかにこんな顔を与えたんだろう」

 そして、ことごとくそれらすべてを断っていた。初めの内はびっくりしたものだが、臨也って良くわかんないしそんなもんかと最近では納得している。
 だがそのフり方がおよそ中学男児として似つかわしくなく、えげつない。臨也を好きで告白したはずの女子が今では臨也を目の敵にしているのも分かる。新羅は友人として、ため息をつきながらも忠告した。

「……何にせよ、いつか本当に周りが敵だらけになるかもしれないから気をつけてね」
「そんなヘマはしない。……でも」
「でも?」

 臨也は新羅から視線を逸らし、空を見ながら、何でもないように言った。

「別に、新羅がいたらそれでいい」

 重みもなにもない言葉だった。だからこそ、心底そう思っているのだろうということが分かった。臨也の口からこんな言葉が飛び出るのは新羅に対してだけで、それを知っている新羅は、こんな臨也にここまで執着されて喜ぶべきなのかどうか迷いながらも、あっそ、とだけ答えた。