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通話時間9分49秒

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 触れ合わない距離も、また。






通話時間9分49秒







 トゥルルルル、トゥルルル。


 『おう、どうした?』

 「ん、なんてことはないんだけど。なんとなく。」

 『暇なのかよ。』

 「うん。今日は暇。っていうか俺が忙しい時は燈治も一緒だよな。」

 『それもそうだな。』

 「今、外?」

 『ああ、晩飯の買出し。今日は一人だからな。』

 「そう、なんだ・・・あのさ、」

 『ん?』

 「俺、作ってやろっか?意外と料理できんだ。」

 『まあ・・・あんだけ調合だのなんだのやってりゃ出来るだろうな』

 「俺も今から飯食おうかと思ってたんだけど。」

 『なら外で食うか?』

 「材料買ったんだろ?」

 『ああ、まあな。適当だけど。』

 「じゃあ今から行っていい?」

 『マジでくんのか?俺ん家分から・・・ねえよな。』

 「さすがに分かんねえな。」

 『実はもうすぐお前の家の前通る。』

 「え?」


 急いで窓を開けたら涼しい風が入ってきた。

 
 『よお。数時間ぶり。』


 電話の声と微かにかぶる肉声。

 なんでだろう。

 その姿が目に入るだけで嬉しくなる。

 
 バタバタと出掛ける準備をして。


 「ちょっと出掛けて来ます!」

 「おお?あんまり遅くなりすぎんなよ。」

 「はーい」

 
 ガラガラと戸を開けて外に飛び出す。




 「じゃあ行くか。」

 「うん。」

 「マジでよかったのか?別に外でもいいぞ。材料なんて明日以降使えばいいし」

 「いいんだ。お前ん家行ってみたいし。」

 「なんもねえぞ、部屋散らかってるし。」

 「俺さ、友達の家とか初めてなんだよな。」

 
 燈治は一瞬言葉に詰まった。

 多分色々分かってくれたんだろう。

 いつものように笑って、


 「俺ん家でよけりゃいつでも来い。18年間の初めて、これから日常にしろよ。」


 


 今が夜でよかった。

 思わず涙目になってたと思うから。

 








 END


作品名:通話時間9分49秒 作家名:佐野新