無くならなければいいのに。
これが隣にいられる証だとしたら。
無くならなければいいのに。
自分の手の痣を見ていた。
1年もしない内に消えるだろう。
それは卒業する頃には消えているということ。
そしたら俺の特別な力はなくなるということ。
「お、まだ残ってたのか。」
「今日買物行くつってただろ。」
「ああ、ごめんそうだったな」
「お前から言い出したくせに適当だなおい。」
「ごめんって。」
柔らかく笑うこいつの助けにはなれなくなるということ。
ケンカに明け暮れていた俺に少しの光を見せたのはこいつだった。
荒事が好きという理由はいつしかこいつを助ける為、に変わっていた。
正直俺が役に立ってるとは言い難い事は自分でも分かっている。
こいつはなんでも大概一人で片付けてしまうから。
「やっぱお前がいないとな。ひとりは寂しい。」
そう言ってくれるから俺は今隣にいられる。
傷付けるだけだった力が守る力に変わってきている。
「さ、行くか。待たせたお詫びにジュースでも奢ってやるよ。」
「安すぎるだろ。」
この力が無くならなければいい。
俺にもこいつの力の何分の一でもいいからあればよかった。
そうすればこの先、卒業という別れが来ても繋がりが持てたかもしれない。
「俺金欠だって。知ってるだろ?」
「依頼こなせよ」
「うーん・・・じゃあ今晩あたり行くか。お前も来いよな、言いだしっぺ。」
「分かったよ」
一日一日、力を持てる日が減っていく。
このままこの毎日が続けばいい。
繰り返し繰り返し、同じ日が。
ありえないのに、そんなことを望んではいけないのに、そう思わずにはいられない。
END
作品名:無くならなければいいのに。 作家名:佐野新