愛しのマイヒーロー
「マシュー」
君が僕の名前を呼ぶ。
「マシュー」
君だけは僕を間違えない。
それは至極当たり前なのだけど、僕にとっては世界の理と同じくらい大事なことで。
君だけは僕を僕だと見てくれる。
それがどれほど僕を救ってくれているか君はきっと知らない。
君は本当に僕のヒーローなんだよ、アル。
「マシューは俺のこと好きかい?」
「…す、好き、だよ」
「でも、言葉だけじゃなくて態度で示さないと分からないんだな!」
間近に見えるアルの笑顔。
すでにアルの膝の上に向かい合って座ってる時点で態度に表してるってことにはならないのかな…なんて思うけど、
そんなこと言ってもきっと納得なんかしないんだろうなぁ。
長年一緒にいるから、アルが何を望んでいるのかは分かってる。
僕がそれを分かってることもアルは分かってる。
だから、僕が逃げないようにアルはしっかりと僕の腰の後ろで腕を組んでるし、楽しそうに笑って目を瞑ってる。
目を瞑った顔が少し上を向いて待ってるのも至れり尽くせりだろってアルの顔に書いてある。
でも、こんな準備万端で待たれたら逆に恥ずかしいって思わな…いんだろうなぁ。
「マシュー」
目を閉じたままアルが僕の名前を呼ぶ。
形の良い唇が僕の名前を形作る。
「マシュー」
ああ…もう、ホントに君はズルイ。
僕が逃げれないことを知っててそんな顔をするんだ。
絶対的な自信があるヒーローの笑顔。
悔しいけど、やっぱり僕は君のその笑顔が好きなんだ。
だから、待ち焦がれてるであろうその唇に触れるだけのキスを。
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