"name"or"nickname"
早々にベッドに潜り込み、うとうとしていた。
既に外は暗く、空は月が妖しく輝いている。
その時、もう既に寝ていたと思っていたハズのトンガリが、おずおずと声をかけてきた。
「ウルフウッド……君は、さ」
「……なんや、トンガリ」
目を開き、トンガリの方を向くと、少し眉根を寄せた顔でワイを見てくる。
聞こうか聞くまいか。
少し悩んだ素振りを見せたが、結局聞くと決めたらしい。
「何で君は、僕のことを名前で呼んでくれないの?」
一瞬、どきりと胸が跳ねた。
いつかは聞かれるような気がしてたけどな。
「はぁ?藪から棒に……何を言うかと思えば、そんなことかい」
平静を装い、言葉を吐く。
聡いヤツやから、淀みなく答えないとまずい。
「トンガリはトンガリやろ。特に理由なんか、あるかいな」
「……」
「なんや、文句あるんか?」
「別に……ないけど」
「ほな、ええやないか」
「でも――」
「ワイはもう寝るで」
言葉を遮り、逆方向を向いて布団に潜る。
トンガリは依然として納得していない雰囲気を出していたが、ついに諦めたのか。
もぞもぞと布団に潜る音が聞こえる。
「……おやすみ、ウルフウッド」
「……おぅ」
ついで、規則正しい寝息が聞こえ始める。
ふっ、と短く息を吐く。
理由なんぞ、言えるか。
ワイが名前呼んだときの顔を「誰かに見られたない」なんてな。
呼んだときのあいつの顔。屈託ない、満面の笑顔。
あないに可愛い顔されてみ。
どんなヤツやって、一発で落ちるわ。
当分、ワイだけのもんやで。
アイツは絶対に、渡さへん。
誰にもな。
作品名:"name"or"nickname" 作家名:十駕