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おしあわせに

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「不思議な夢を見ました」
「夢?」

そろそろ梅雨入りし、天気も崩れるだろうと言われつつ、気象予報士を含めた大方の人間の予想を裏切りハレ晴れとした天気を見せる日曜日。
そもそも雨天中止、などという考えのない我等が団長には天気など関係なく「それじゃあ日曜にいつもの場所、いつもの時間ね」とそれこそ晴天の空のような笑顔を浮かべてそう言い放ったのである。
結果として雨の降らなかった晴空の元、いつものように不思議探索という宛てのない散策に貴重な日曜を費やすことになった。

しかし今回の探索の相方は古泉だ。
同じ男同士で気兼ねの必要もないというのもあるが、浅からぬ付き合いをしている仲であるためこれはラッキーと言えばラッキーである。
何てったってハルヒに気兼ねすることなくデートのようなものができるのだから。

そんなわけで、組分け決定後、多少なりとも浮かれた俺である。

ところが、そんな俺とは逆な様子だった古泉。
気になって問い詰めれば、わずかに躊躇った後、冒頭のように口火をきった。




「嫌な夢だったのか?」
「いえ、そうでなく…ホントに不思議、としか言えず…」
「UFOが飛来したりツチノコ発見したりか?それが正夢になればハルヒは大喜びだな」

すっかりデート気分ではあるが、そもそもの名目は『不思議』を探すことだ。
見つかっては困るものの、もし見つかればハルヒはいたく満足するであろう。

「それとも違って…不可解、と言うのが正しいかもしれませんね」
「不可解?」

勝手なイメージだが、その単語にどうもよくない感じがして、思わず眉がぎゅっと寄るのを自覚した。
しかし、古泉はそこまで危機感を見せず、ただ困ったように眉尻を下げて口元に軽く握った指を添えている。
考え事をするときのこいつの癖だ。

自分でその夢についての解釈を戸惑っているのか。
そんなに奇妙な夢かと、つい気になって、どんな夢だと内容を訊ねた。


「どこかの…部屋というか広い会議室みたいなところに沢山の人がいたんです」
「ほう」
「そこには僕とあなたもいて」
「俺も!?」

古泉の夢に俺が…と、ここは喜ぶべきかまだわからないな。
大人しく聞こう。

「それで僕たち以外の方はみんな僕たちを見ていて、それって少し怖い気もするのですが、そういう感じはなくて、皆さんにこやかというか幸せそうな顔なんですよね」

まさかそれは川の向こうの人達とかそういう類じゃないよな。
やめてくれ、お前が川越えしそうになったら俺はどんな手段を使ってでも阻止するぞ。
いや、会議室みたいなところって言ってたな。
それに俺もそこにいるなら確実に止めるし。うん。

「それで皆さん言うんです」



二人でお幸せにね



「………それは、俺とお前、に…」
「はい、不思議でしょう?」
「と、いうか…それ、なんか…恥ずかしいな…」
「何がですか?」

こいつ、気付いてないのか!?
自分の夢だろうが!

「なんつーかこう、祝福されてるみたいで」
「祝福?」

なんで俺が古泉の夢解説を本人にしなければいけないのか。
しかし、これは古泉にも理解させる必要がある。

「ほら、あー…結婚式とか、出席者がよく言うだろ『お幸せに』とか」
「…え、えっと…それみたい、と…?」
「しか思いつかん。というか俺はそれがいい。場所が会議室みたいだというのは確かに不可解だが、場所なんざどこでもいい。だれが言ってるか知らんが祝福されたんなら、古泉、幸せになろうな」
「た、ただの夢ですよ!」

確かに夢だ。
でもそれはお前が見たんだ。
ということはお前はそれを望んでいるんだ。
俺も見たいさ。
俺とお前の、恋人としての仲を沢山の人達に祝福される夢を。
そしてそれが現実になるように。

「夢でも正夢かもしれないだろ。どっかにそういう人がいるかもしれないし、もしかしたらそう言ってくれた人はハルヒかもしれないだろ」
「まさか、知らない人達でしたよ」
「いつかハルヒが祝福してくれるかもしれないだろ。長門も朝比奈さんも」
「そんな…」

俺のご都合解釈に余計戸惑の色を強く出して俺を見ている。

「そうなるよう、がんばるから」
「え…」
「このまま隠し続けたくはない。俺はお前を愛してるから、それをごまかしたくない。ハルヒや長門や朝比奈さんも恋とかじゃないけど好きだから嘘をつきたくない。俺とお前の付き合いが間違ってるだなんて思ってない。誰にも思わせない。俺はお前と幸せになりたい。だから、いつか、お前のその夢が正夢になるようがんばるから」
「あ、愛っ…あなたそんなこんな外ではっきり…」
「ごまかしたくないって言っただろ。だから、古泉、一緒に幸せになろう」
「…」

俺が長々しゃべる間にどんどん顔が俯いていって、内心焦ったが、これは言わねばならんことだ。
古泉だってそう思ってるはずなのだ。

「古泉…」
「………ぼくも…僕もがんばりますよ。だって、一緒がいい、ですから」

しょうがないですね、とでも言いそうな顔だが、古泉、お前、耳まで真っ赤だぞ。

「あなたが恥ずかしいことばかり言うから」
「お前もそう思ってるくせに」
「!……そりゃ、そうですけど…」

真っ赤な顔はそのまま、けれど笑ったお前の顔見ると幸せだと思うよ。
そう、確かに今俺達は幸せだ。
多分、誰かに言われるまでもなく幸せなんだ。
でも祝福されたら嬉しいじゃないか。
だから、思う。

古泉と一緒に、たくさんの人から祝福されるぐらい、幸せになろうと。


「好きですよ…」
「!!」
「あなただけに言わせるのも、ね…」

微笑む古泉を見てたら、そうなるに違いないと、俺は強く、強く思ったさ。
そんな俺を見て、古泉も同じように思ったんだろうな。
どちらともなく、一緒に笑った。



誰かは知らないし、そもそも古泉の夢ではあるが、感謝するよ。
俺達を祝福してくれた人達に。

どこかにいるかもしれないしな!


俺は古泉と一緒に二人で幸せになるよ。






HAPPY END !


二人が幸せになるの願ってる人たくさんいたよ!!
キョン古オンリーの会場でホントそう思った!

オンリー開催ありがとうございました!!
作品名:おしあわせに 作家名:由浦ヤコ