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まみむめももも
まみむめももも
novelistID. 7150
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君の知らない物語

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ぱたぱた。
背中からこの走ってくる音が聞こえたら、俺は振り返らなくても、この足音の持ち主が誰なのか分かる。だから俺は、相手が俺に声をかけてくる前に、話しかけた。
「どうした、秋?」
そして振り替えると、そこにはやっぱり秋がいた。秋は驚いたのか、一瞬きゃっと小さい叫び声をあげるが、けどすぐにいつもの笑顔で俺に話しかけた。
「また土門君に気づかれちゃった。どうしていつも気づかれちゃうんだろ。」
秋がそう不思議そうに言うと、俺はいつものお決まり台詞を口にする。
「そりゃ、いつも一緒にいるからな。それくらい分かるさ。」
冗談のように軽い感じで俺はこう言う。けど、本当だった。
秋にしても一之瀬にしても、西垣にしても俺はこいつらのことはすぐに気づくことができる。秋はぱたぱたと走り方に特徴があるから分かるし、西垣の場合は、駆け寄りながら俺を呼ぶから、すぐ分かるし、一之瀬なんかは、いきなり俺に抱きつくるようにしてぶつかってくるから、後ろを振り向く暇なんてない。本当、こいつら、分かりやすい。
それでも俺は、秋のことだけは他の2人よりも早くに気づくことができた。

 秋は、俺達の姿を見るといつも必ず駆け寄ってきた。小さい体で力一杯走って、遠くを走ってる俺達に追い付こうと必死で追いかけてきた。どんなに、俺達が遠くに走っていようと、秋は俺達を目指して駆けてくるのだ。そうやって秋が俺達に追いかけてくる姿は、兄についてまわる小さい妹を彷彿させ、そんな秋の姿を見る度に俺は、いつも微笑ましいようなくすぐったい気持ちになり、そして何より俺を安心させた。
俺は皆より背が高かったのと何かと人のことを気にかける性格のせいか、皆の世話をやく立場になることが多かった。正直、わざわざ誰かの面倒を見るなんて自分からする気なんてないんだけどさ、ほっておくと一之瀬が、俺達が驚くようなことを考えて、秋や西垣を巻き込むから、自然に面倒を見る立場になっていた。それはサッカーでも同じだった。一之瀬が人が考えないような無茶だと思う必殺技を考え、それを実現しようと特訓をする。そしてそれを俺や西垣が、そんな一之瀬に付き合い、サポートをする。そんな風に俺達の関係は成り立っていた。
唯一、違う点があるとすればサッカーに関してだけは、一之瀬がどんなに無茶な考えを行おうとしてもに俺は最後まで付き合ってしまうことだった。何故ならそんな一之瀬の無茶は、一之瀬自身がそれを絶対にできると諦めず信じ、そして本当に叶えてしまうのを知っていたからだ。そんな一之瀬の行動に俺や西垣、それだけでなくジュニアチームの皆が惹き付けられていた。最初は無謀だと呆れていたのに俺達は、いつの間にか一之瀬の無茶に信頼を寄せるようになっていった。本当、一之瀬って凄いよな。
けど、ある日、俺はふと気づいたんだ。一之瀬が試合で活躍するようになった頃から、俺と一之瀬の距離が遠くに離れていくような錯覚を感じ始めたことに。最初は、自分の気のせいだと思った。けど、1度生まれた不安は日に日に、大きく育ち、俺はとうとう自分の不安から目を逸らすことができなくなった。その不安の正体は一之瀬と自分の実力の違いだった。皆の信頼を手に入れた一之瀬の力、それをできない自分の不甲斐なさに悔しさ、そして一之瀬に嫉妬した。サッカーを始めた頃は、俺達の実力はそんなに差なんてなかったはずだ。サッカーをするのがただ、楽しくて仕方なかった。一之瀬が俺の出したパスを繋げてボールを前へ前へ運んでくれると凄く嬉しかった。一之瀬とするサッカーが好きだった。一之瀬が走ってる姿を見る度に、俺もあいつと同じように前へ、いや一之瀬よりも先へ走って行けると思っていた。
けど、今は違った。
一之瀬はもう自分なんか置いてあっという間に走っていける。
俺より先へ進んでいく姿を見る度に思った。あんなに近くにいた一之瀬にいつか自分が追い付けなくなったら、その時俺はどうなってしまうんだ。
 そう思った瞬間、あんなに楽しかったサッカーが、あっという間に怖くなった。一之瀬が前へ進み、一緒に走っていた西垣も一之瀬を追いかけ、前へ進んでしまい、俺だけが追い付けなくなってしまったら。俺は皆と居られなくない。そう思った。
そんな時、気づいたんだ。

秋の声に。秋の足音に。

秋はいつも走って俺達を追いかけてくる。秋と俺達じゃ、体力も走る速さも全然違うから、いつも俺達を追いかけてくる形になってしまう。ただでさえ、俺達に追い付くことだけでも大変なのに、それでも秋は俺達からボールを取ろうといつも一生懸命走ってきた。諦めないで何度も何度も、俺達を目指して走ってくれ秋の姿を見る度に、自分と同じことをしている秋を俺は不思議に思った。だから、ある日、俺は秋に何気なく聞いたんだ。俺達とサッカーをするのは、大変じゃないかって。
けど、秋はその質問に笑って否定した。

「大変なんかじゃないよ。むしろ皆がいるから私は、走れるんだよ。皆が女の子の私と、サッカーをすることを受け入れてくれたから。私に遠慮なんてしないで、プレイしてくれるから、私、試合にでれなくても仲間って感じられるの。今は、追いかけるので精一杯だけど、いつか皆の隣に行って一緒にプレイするから。」

だから待ってて。

そう言って微笑んだ秋の顔はとても綺麗だった。
秋の俺達に対する信頼が嬉しかった。秋は利口だから、本当は俺達に追いつけることは無理だって気づいているはずなんだ。それでも、秋は諦めたりしないで俺達を目標にして走り続けると、言い切った。
そんな風に諦めないと言える秋の強さが、愛しかったよ。

だから俺はまた前を向いて、走ることにした。自分を仲間と信じてくれる秋のために。
そして何より秋が諦めないで走りぬこうとしているのを知ってさ、俺が簡単に諦めるわけにはいかないよな。
 
秋はきっと俺が一之瀬のことで悩んでいたことなんて知らないだろう。俺がどんだけ、秋に救われたことなんて知らないだろう。けど、それでいいんだ。秋は優しいから、きっと俺がこんな不安を抱えてるなんて知ったら、きっと自分のように悩んでしまう。そんなの俺は嫌だった。
それに俺は、こんな風に悩んでも一之瀬とサッカーを嫌いになれなかった。
今でも時々、一之瀬の背中を見る度に、俺は一之瀬に置いてかれるような不安に押し潰されそうになる。そうなる度にサッカーをするのが、一之瀬といるのが怖くなった。
けど、それ以上に俺は一之瀬とするサッカーが好きだった。一之瀬が無茶な行動に出るたびに、1番近くで一之瀬を支えた俺が、無茶をできると実現する一之瀬の姿を見ることができた。そんな特等席にいることが許されてる自分が、何よりも嬉しかったんだ。
だからいつか、一之瀬に置いてかれたとしても、俺は最後まで走り続けるんだ。
例え、一之瀬に追い付けなくなったとしても。また一之瀬や皆とサッカーがしたいから。
一之瀬と始めたサッカーが楽しかったから。

「土門君?」

ふと気づくと、秋の少し心配している顔が俺の顔を覗いていた。
きっと俺が何か考えているって気づき、声をかけたんだろう。
俺は安心させるようにいつもの軽い笑顔で、
「何でもないさ。」