二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

marry me?

INDEX|1ページ/1ページ|

 

「結婚しようか」
「ふへ?」


久方ぶりの休暇で、朝から天気も悪くない良い日だった。朝からクローゼットに並んでいる黒く堅苦しいスーツを無視して、日本から持ち込んだ使い古されたタンスから、その雰囲気に違わないラフな服を選び出して買い物に出掛けた。運良くお目当ての食材を安く買えて今日は一日なんか気分がよい、と自分にしてはひどく穏やかな気分だったというのに。
目の前に座って、買った食材を調理してこれもまた自分でも満足する出来になった料理を気だるそうに食べながら(いつものことながら失礼極まりない)彼が言った言葉に、思わず持っていたスプーンを落とす。
何を言っているのだこの男。
とうとう頭まで外の陽気に当てられたか。
元から決して良くはない頭だったが、まさかここまでとは。

「はあ」
「いやだからさ、結婚」
「言葉の意味がわからないのではありません。今ここで言う意味がわからないだけで」
「うん、俺も今思いついて言っただけだし」
「…何なんですか、あなた」

結婚。
おそらく自分にはおよそ縁がないであろう言葉。確かに今まで巡ってきた生で結婚しなかったわけではないのだが、今この自分にまったくそぐわないし、第一彼も僕も男だ。性別の壁をひょいと乗り越えて何を言っているのだろうか。愛に性別なんて!だとか、障害があるほど燃えるんだ!とか、自分のそれ以上に彼に似合わない。似つかわしくない。
おまけに思いつきだなんて。
縁がないと思っている自分にでさえ、一般人にとって其の言葉が意味することや重みぐらいはわかるというのに。
呆気に取られてるというよりあきれかえっている自分を見もせず、相変わらず面倒くさそうに料理を口に運びながら彼は会話を続けた。

「あのさ」
「はい」
「今日って久し振りの休日じゃん」
「そうですね、3ヶ月ぶりぐらいかと」
「んで、そんな貴重な休みにね、お前と食事してるわけじゃん俺」
「僕が作った料理ですけどね」
「それだよ」

いったい何なんだ。そういう風に特別と思っているのなら少しは嬉しそうだとか美味しそうに食べるべきではないのか、という言葉を飲み込む。言った所で話は続かないし、詮無いことだ。
さっぱり要領を得ない会話に焦れている。

「考えてもみろよ、およそしばらく巡ってこない休日に、誰が好きこのんでどうでもいいやつと、しかもそいつの手料理なんか食べてるの俺」
「押し掛けてきたのは貴方じゃないですか」
「うん、まあ、そうなんだけど」
「それで?」
「だから、俺、お前が好きなのかなって。そしたら結婚すべきなのかなって思った。お前の料理美味しいし」

考え出したら止まらなくてさー、でもなんか話したらすっきりした!とのたまい、さっきとはうって変わって美味しそうに料理を頬張り出した。ぽかん、と彼の皿の中身がどんどん減っていくさまを見る。かちゃりと音を立ててフォークが横へ置かれて、皿を突き出された。どうやらおかわりを要求されているらしい。
その仕草にようやく自分の思考がたどりついたころ、言われたことの意味を深く探り出して、一体腹を立てればいいのか突然の告白を喜べばいいのか、一体自分は今までこの男に何度気持ち云々を振り回されたのかということが一気に押し寄せてきた。まったく、まったくこの人は!どこまで自分を!


突き出された皿を振り払って、とりあえず彼の頬をしこたま殴る。この分だと顔が真っ赤に腫れるだろう。ざまあみろ!と心の中で罵りながら、自分の感情に正直に反応して上がってくる体温を無視して、彼から繰り出されたであろう反撃に耐えた。


二人の貴重な休日が、後かたづけと掃除で潰れてしまったのは言うまでもない。
             


              marry me?

作品名:marry me? 作家名:sui