ラブレター
突然こんな手紙を貰っても戸惑うかもしれないけど
最後まで読んで欲しい。
俺は無事に空母に着艦できなかったり、弟には兄として
あまり良い所をみせれていないし、顔もカッコよくないと思う。
しかも君にとっては敵だし。
だから好きだなんて言っても希望は少ないかもしれないけど、
でも小さな希望にかけてみたくてペンをとりました。
武蔵ちゃんの声を聞いたり笑顔を見たりしただけで
胸がドキドキして爆発をおこします。
周りを巻き込んでの大騒動です。
自分で書いていて恥ずかしいけど、俺の人生でこんなに
人を好きになったのは初めてです。
毎日神様にもう一度君に会えるように願っています。
武蔵ちゃんの中で俺と付き合うという選択肢は無いと思う。
でも、ほんの少し、ほんのちょっとでも俺の事が好きという
気持ちがあるのなら、俺が君の事を好きだという事を
覚えておいてくれませんか?
こんな手紙を送ってしまってごめんなさい。
でも本当に武蔵ちゃんの事が大好きです。
Willis F Grumman
武蔵は大和の執務室で、向かいに座っている大和が
手紙を読み終わるのを待っていた。
読み終わり、今しがた見ていた紙から目線をあげると
怒気をはらんだ瞳で大和は言う。
「で?こんなくだらない物を私に読ませて、
どういうつもりなんだ?」
指で紙をはじく音が響く。
「お兄様に返事を書いたほうが良いのかどうか聞こうと思い
読んでいただきました!」
真剣な表情で聞いてくる武蔵に、はぁっと大和はため息をつくと
諦めた顔で折りたたんだ紙を渡す。
「私ならこの手紙をちぎって粉々にして燃やしても
飽きないぐらいだが武蔵はそれをしたくはないんだろう?」
「そんな事をしては駄目です!せっかくウィリスさんが
くださった手紙なんですから。」
慌てて兄から手紙を隠すような仕草を見せた武蔵に
「・・・・・それが答えだ。返事でも何でも書けばいいだろう。」
と一時の沈黙を置いて大和は答える。
それを言ったっきり額に手を当てたまま何も言わない大和に、
武蔵はペコリとお辞儀とお礼をしてそのまま部屋を出ようとする。
ドアの所まで武蔵が来ると、そのままの姿勢で大和は言い放つ。
「いいか忘れるな。相手は...敵だ。」
「わかっていますお兄様。」
満面の笑みで武蔵は返し、うきうきとした様子で大和の部屋をあとにする。
残った大和は眉間に皺を寄せ、目を閉じた。
おわり