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食べるココア
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novelistID. 8719
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いわせんなよはずかしい

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昼の気温はとうに20度を越し 夜になっても一向に涼しくなる兆しはない。
蒸し蒸しとした空気がまとわりつく。冷房もないアパートの中では余計に だ。
事後の気だるい空気の中 換気兼せめてもの涼を求めて開けた窓の外 空には黒い紙にぶっすりと指で穴を開けたような丸い月が浮いていた。
ぼんやりと煙草をふかす静雄を一度振り返り 臨也はくしゃくしゃになったタオルケットの上に巣を守る鳥のように寝そべると窓の外を見つめた。 
月光の冴えた光に手をかざしてみる。
「…月に行ってみたい」
ぽつりと呟かれた声に ベッドの上に浅く腰かけ 延々と肺にタールを流し込む作業を続ける男も眼の中に満月を映しこんだ。
「行けばいいだろ」
「宇宙から この星がどうなっているか見てみたい それでね 人間の愛しさを再確認したいんだ そうすれば今よりもっともっともっと俺は
人を愛せる気がするんだ 
ぱたぱたと足を振りながら呟き続ける。
「お前 少しは黙れないのか」
ほんの少し苛立ったような静雄の言葉に 臨也は口の端を持ち上げるとベッドに乗り上げ 腕を静雄の首に絡めた。
「ねえ 黙らせてよ」
ちっ と舌打ちの音が聴こえ 首をふいと反らされる。
「ねぇ シズちゃん。 俺のこと月に 連れて行って」
そう耳元に流し込むと 臨也は静雄の唇に自分のそれを乱暴に押し付けた。