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眠れない夜、目醒めない夢

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いつもキャンキャン吠えて五月蝿いヤツだと思っていた。
いつも何かに腹を立てて、いつも何かに警戒してるようだった。

血筋がキライで、この血統を重んじる世界で実力だけでカポに見初められて幹部までのし上がってきたヤツ。

その部分は、素直にすごいと認めている部分でもある。
欲は強いが、自分のシノギに責任と自信を持っている分、あいつの日ごろの言動からは信じられないくらい仕事には完璧主義だ。


変なヤツだな、と思った。
それと、その完璧主義に少しの不安も感じた。
いつかどこかで壊れてしまうんじゃないか、と。イヴァン自身が。




そんな風に考えていたからなのか、それとも本当にただの衝動だったのか・・・

あの日、俺たちの関係は少し変わった。




刑務所から脱獄後、なんとかデイバンまで戻ってきて、ホテルで生活をしていた頃、
夢見が悪く、夜中に目が覚めた俺は、外で雨が降っていることに気づいた。



「クソ・・・雨じゃ夜景も朝日も見れねぇじゃねぇか・・・」



日ごろから朝は早いといっても、まだ夜明けには早すぎる。
それでも眠るには、目が冴えすぎてるし、さっきの夢が頭をよぎって眠る気はしなかった。
少し悩んだが、こんな時間じゃ誰もいないだろうと、上半身裸だった上からガウンを羽織り、部屋を出る。ロビーのソファーで少し時間を潰すつもりだった。



「・・・あ?イヴァン?」



扉を開け部屋の外に出ると、ロビーにイヴァンがぼんやりと立っていた。
俺からの位置だとちょうど背を向けている状態で表情までは分からない。
ただ、なぜかイヴァンはびしょ濡れで、床の水溜りの状態から随分前からそこに立っていることに気づいた。
とりあえずこのままだと確実に風邪を引く、そう思った俺は、部屋に一度戻り適当なタオルを手に持ちまだぼんやり立ち尽くしているイヴァンに近寄った。



「なにやってんだ?風邪引くぞ」



わざと少し後ろから声を掛け、自分の存在を相手に伝える。
俺の声にビクンッ!と体を竦め、勢いよく俺の方を振り返った。
声の主が俺であることが分かると少しほっとした表情を一瞬浮かべ、すぐにいつも憎まれ口を叩く。



「なんだ、お前かよ。うっせーよ!お前には関係ねぇだろっ!ほっとけ!」

「風邪なんかひかれたら迷惑なんだよ、さっさと頭拭け」

「ちっ・・・クソ」



さっきまでのぼんやりとした雰囲気とはまったく違ういつものイヴァンがブツブツ文句を言いながら俺の渡したタオルで頭を拭いている。
さすがに自分でも今の状態は風邪をひく可能性があることは理解しているのだろう。
ガシガシと適当に頭を拭く姿を見ていると、頭を拭き終わったイヴァンと目があった。



「なに、見てんだよ・・・」

「いや?別に・・・?」



ちっ・・・!とか、クソッタレとか、なぜか暴言が聞こえた。
意味が分からん。そして、イヴァンを見ていた俺自身も意味が分からなかった。
ただ、なんとなく、イヴァンの青白く光る銀髪が気になった。
俺の好きな金髪でもないのに・・・今日の俺、なんか変だな。



「なぁ・・・なんで雨になんか濡れたんだ?車はどうした」

「別に関係ぇねぇだろっ!うっせぇーんだよっ!」



警戒心バリバリのギャンギャン吠える犬、だな。
本当はそんなに知りたかったわけではなかったが、イヴァンの反応を見てふと虐めてみたくなった。
少しあった距離を詰め、イヴァンの目の前に立つ。
お互い立っていると、身長差が如実に出る。
俺はイヴァンを完全に見下ろし、イヴァンは俺を見上げている。こうするだけで思いの外、圧迫感と無言の圧力を相手は感じる。
俺を睨んでギャンギャン吠えていたイヴァンも少しだけその声を落とし、視線を揺らした。
その反応に少しだけ満足し、ふと目の前にあったイヴァンの髪がまた目についた。



「な、なんだよ・・・なんで近寄ってくるんだよ・・・」

「なぁ・・・お前の銀髪って、触っても冷たいのか?」

「はあ?何言ってんだ?ルキーノ」



俺の言葉に心底呆れた表情で俺を見上げるイヴァン。
そんなヤツのことは気にせず、好奇心のままイヴァンの髪に触れる。
雨に濡れた髪は触れた瞬間は冷たかったが、すぐに俺の体温を移して平温に戻る。



「・・・さすがにそんなことないか」

「ちょ・・・!なに触ってやがるっ!放せっ!触んなっ!!このクソッタレ!」



心の底から嫌がっているのか、頭を振り、両手を使って俺を振りほどこうとするイヴァン。
そこまで嫌がられるとどうしてももっと虐めたくなるのは男の真理だろう。
振り回すイヴァンの両手を片手で簡単にまとめ上げ、抵抗できないようにすると、相手に分かるようにその銀髪にキスを落とした。



「なっ!!!なにしやがんだ!!放せっ!このクソ!!
風呂に入って頭洗わねぇときたねぇっ!」

「・・・ほぉ、風呂に入ってキレイにするなら、別にもっと汚くなっても良いよなぁ~?」



あいつの言葉になぜかカチン、ときた。
今考えればイヴァンの反応は至極当たり前だったような気がする。
その時の俺は、相手の言葉に少しだけムカつきさらに嫌がらせをエスカレートさせ、イヴァンの顎を空いている方の手ですくい上げ、上を向かせそのまま唇を自分のそれで塞いだ。



「・・・ふっ・・・んんっ!!・・・ん・・・っ!」



イヴァンの唇を思う存分蹂躙し、貪って、舌を絡めて解放してやる。
最後にちゅっ、と音を立てることとニヤリと笑ってやることも忘れない。



「・・・んっ・・・はぁ・・・なかなか上手いじゃないか、イヴァン」

「・・・な!なにしやがんだぁあああああああ!!このファッキンヤロー!死ねっ!」



真っ赤な顔をしたイヴァンが俺の腕を振りほどくと、口を塞ぎつつも大声で怒鳴りつつ部屋に向かって走り去っていった。
最後の最後までうるさいヤツだなぁ・・・ホントに。

気づけば、外の空は白み始め太陽がそろそろ出てくる時間のようだ。
思いの外良い時間潰しになったようだ。
夜中に見た夢のこともいつの間にか忘れ、俺も気分良く自分の部屋に戻った。



この感情が恋だとか愛だとかそんなこという気はない。
ただその時は面白いおもちゃを見つけた、そんな楽しい気分だった。



<END>