勝者と愚者と臆病者と
−−−逢いたい
誰に逢いたい?
『臨也に?』
『シズちゃんに?』
『竜ヶ峰に?』
『帝人君に?』
臨也と静雄は別々の場所都会のくすみきった青空を仰ぐ。
そこに通り雨が降り、二人の顔をぬらす。
それでも二人は構わずに天を仰いだまま。
『シズちゃん。』
そう言って何時ものように笑う臨也の顔がふと浮かぶ。
『静雄さん、大好きです。』
そう言って少し照れながら、円満な微笑みで笑いかけてきてくれる、何時もの帝人の顔が臨也の顔を打ち消す。
『臨也。』
そう気だるそうに言う静雄の顔が浮かぶ。
『臨也さん。』
そう言って、少し照れたように呼ぶ帝人の顔に、その静雄の顔が打ち消される。
【俺は、どっちに逢いたいんだ?】
天を仰ぎながら、二人は自問自答する。
「静雄さんは可愛いなぁ。」
クスリと笑い、遠くで静雄を見つめる帝人。
「臨也さん、恋愛って・・・惚れたほうが負け・・・ですよね。」
帝人宛にきた臨也からのメールに邪笑する帝人。
恋に溺れているのは誰?
恋に捕まったのは誰?
細く笑んでそれを見つめる勝者は捕まったものに、溺れたものに愛される。
作品名:勝者と愚者と臆病者と 作家名:狐崎 樹音