フォルテシッシモ
茜はむしろ、格好いい静雄と、良い蹴りを繰り出すヴァローナへ、ますます会う機会をせがむようになった。
他の子どもの保護者たちや劇場側へは、赤林のポケットマネーで、保障と弁償と、新しい発表会のプロデュースということで収まった。元々、上昇志向や高級感に弱い親たちである、六本木のより値段の高いホールを借りることで納得してもらった。ピアノも新しい物を買った。もちろん、壊したものより品のよいものである。
事務所のソファで膝を抱えるヴァローナの隣に静雄は座った。
「落ち込むんじゃねーよ。ぶっ壊したのは俺だし」
「爆弾で先輩が致命傷を受けるかどうか試験できなかったのは、残念無念です」
「て、落ち込む理由そっちかよ!」
「私の能力過小は、録画機を設置する可能性を探索しなかった点です。それは非常に残念無念です」
「わかってるじゃねーか。あんな、親ってもんは子どもの晴れ姿が見たいもんなの。わかる? うちの親父とお袋も最初は弟がテレビに見るたびに録画してたぜ。最近は飽きたのか、普通にワイドショーとか見てるけどよ」
「……私の元保護者もそれを希望すると決定できますか」
「そうだと思うぜ」
「把握しました」
数日後、彼女の父親は、日本語で書かれた結婚相談所のパンフレットを手にして首を傾げる羽目になり、その中の、ウェディングドレスを着た娘と隣にタキシード姿の長身の青年が写っているページにて思わず首を自ら折ってしまいそうになるほど傾けたと言う。
fin