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ずる賢さが勝利する

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大学生の夏休み、今年は選択した講義の課題が少なく俺たちは車を借りて二人して出かける事にした、知り合いがキャンプ場を経営していると弦一郎が言った。なら、と俺はキャンプにいこう、道具ならなんとかなるだろうと提案する。弦一郎はキャンプなんて初めていくと内心ウキウキしているようだった。
当日、ありったけの道具を二人で詰め込んで朝早く地元をたった。車は俺が運転する、弦一郎は車の免許はとったものの車が体に合わないと運転したがらなかった。
助手席に座った弦一郎は運転中、至極うるさかった。やれ危ないスピードを落とせ、やれ右だ左だ、なんて。
「弦一郎、気に入らないなら自分で運転するか?」
俺が一言呟くと弦一郎はぐっと黙ってただ助手席に座るようになった。なんだか言うことが年寄りみたいだと思いながら俺はまた運転に集中する。途中のコンビニで花火をみつけて買う、俺は花火が好きだ。
「花火は好きか?」
「あぁ、嫌いではない」
嫌いではないとネガティブな答えを返す弦一郎だがチラチラと花火に目線を送っているのを俺は見逃さなかった。
「もう買うものはないな」
「あぁ、」
腕組みをしてコンビニ内で仁王立ちする弦一郎を先に車に戻らせて会計をすませた。このあともなんだかんだと弦一郎は五月蝿いかもしれないとガムを渡す。口にものが入っているときは絶対に喋らない弦一郎だ、俺はそれを見るのが楽しかった。
キャンプ場につくと今度は弦一郎が役にたつ、テントをはるのが上手い。俺はよく知らないからクーラーのかかった車の中でのんびりアイスを食べていた。
「あ、そう言えば二人ぶんの寝袋を忘れた」
「なに?」
「いや、ひとつはあるんだ」
俺は困ったふりをした、弦一郎はんーっと唸って決断した。お前が使え俺は平気だ。しかし雨がふったあとで風が冷たい、夜はもっと冷えるだろうに、俺は解った悪いな。と返事をした。




大方の遊びは終えて気付けば晩御飯くらいの時間になっていて、お湯をわかす。二人して料理ができないからカップメンだ。あまり食べた事はないが美味いと思う。
弦一郎はひとくちふたくちと麺をすすってやはりみんな呼べばよかったな、と笑った。俺はその言葉に少しひっかかり楽しくないのかと訪ねたが弦一郎は慌てて楽しいからみんなつれてくればよかったと思ったんだと弁解した。とくに赤也なんかは好きそうだからな、付け足した名前に俺は嫉妬した。


「いま何時だ」
「ちょうど22時すぎたところだな」
時計を見て時間を教えてやると弦一郎はぎょっとした。4時には起きてランニングすると言っていたから早く寝たいのだと思った。本当に馬鹿正直に真面目だ、もう寝るか?それなら俺も寝よう灯りを消すと俺は懐中電灯のスイッチを入れる。
案の定、夜は冷えた、いくらなんでも弦一郎だって風邪をひくだろうと俺はそっと彼の横へぴったりくっついてひとつだけの寝袋を広げて自分と弦一郎二人にかける。
「な!!」
「さすがに掛け布団無しは辛そうだからな」
「……」
「素直にありがとう、と言うべきだぞ」
「…あ、ありがとう」
弦一郎の方を向いて俺は目を瞑った。
正直に言えば俺はこれが目的でねぶくろをわざとひとつ減らして車につんだ、赤也は本当はくるはずだった。しかし俺が頼み込んで来るのをやめて貰った。我ながらセコいやり方だとは思うが、こうでもしなきゃこんなチャンスめったにこないと考えたから仕方ない。仕方ないんだ。
現に俺はいまぴったり弦一郎にくっついて眠れるし、ドキドキして心臓の音が聞こえそうな程緊張して硬直してる弦一郎の顔を見れるのも俺にとって幸せに違いない。
勉強、テニスをこんつめてやるのも楽しいが、やはり弦一郎を独占するのも異常なまでに楽しかった。
明日は最後の日だ、弦一郎はきっと楽しかったかと聞くだろう。そうしたら俺は最高だったと答えるつもりだ。

今から弦一郎の顔を予想するだけで俺は



目を瞑ったのに眠れそうもなかった。







END
20090726
作品名:ずる賢さが勝利する 作家名:Rg