両手いっぱいの君との時間
「ちょうどツナが見えたから、これおみやげな」
「ありがと、こんな夜中でよく俺だってわかったね」
「そりゃー・・・愛の力ってやつ??」
ひょこっと顔を見せる山本の顔は月明かりに照らされた。
長期の任務で守護者はバラバラに行動するようになる、右腕の獄寺は比較的に綱吉と行動するが人手不足、下っ端たちではどうにもならない交渉があればその時は獄寺ですら綱吉のもとを離れなければならない。そのため今週一週間綱吉は屋敷に一人(勿論護衛はついているが)だった。子供の頃と違い綱吉もそれなりに自分の強さに自覚が持てるようになったので夜中コッソリ抜け出して夜道を散歩する。そのたび護衛の部下が獄寺とリボーンに連絡をとるから綱吉には翌日お叱りと号泣の嵐が待っているのだ。それでも綱吉が夜道を散歩するのはこの散歩コースにたまに山本が現れるからだった。山本の乗ったディスカバリーの色は綱吉が選んだもので買って以来山本はこの車にずっとのっている、ディーゼルエンジンの心臓に響くような音は綱吉にはとても心地良いものになっていた。
「ツナも俺の顔見えないのによく俺だってわかったな」
「愛の力だよ、」
「愛されてんのなー俺。」
「可愛い部下だからね、」
「それだけ??」
右側に運転席があるため山本は助手席をはさんだ綱吉までうんと体を伸ばした。少しだけ沈黙、綱吉は貰ったバラをじっと見つめたままだった。山本はそんな綱吉の頭をぺシっと叩いて「ドライブいこー」と助手席のドアをあけた、綱吉は笑い「うんしょ」なんて年寄りくさく車体の高いディスカバリーに乗る。
「高いなーバスに乗ってるみたい」
「気分いーだろー」
「うん。でもちょっと背が低い俺には乗りにくいな」
「・・・そうかーそうだなーじゃ今度低くしてくっから」
他愛も無い話を久しぶりだと、綱吉はうきうきしていた。山本も山本で久しぶりの綱吉との会話を心から楽しんでいた。ところが、心地良いエンジン音と山本との会話で綱吉はうとうとし始めた。山本は子供のように目を擦りながら「眠くない」だの「寝ない」だのいってる綱吉に後部席にあるくしゃくしゃにまるまった毛布をかけてやる。今まで駄々をこねていた綱吉は毛布をかけてもらったとたん魔法がかかったように眠りについた。
「おつかれ、ツナ」
「・・・〜」
朝になって山本は今日は小僧と獄寺にたっぷり怒られんだろうな・・・とぼんやり眠たい目を擦りつつツナの寝顔にキスをひとつおとした。
END
「久々にお前の顔みて、もっと好きになっちゃったよ俺」
作品名:両手いっぱいの君との時間 作家名:Rg