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罪歌と臨也とモブ

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(誰か、誰か…私の声が聞こえる方、いらっしゃいますか?居たら…)
誰か、折原臨也を犯してくれませんか

ざわり、杏里の纏う空気の流れが変わった。彼女の黒い瞳が暗闇の中で一瞬にして赤く染まる。
(私にこの人は殺せない、)
罪歌の記憶を持ってしてもこの青年、折原臨也はそれを遥かに上回る動きで繰り出される攻撃を素早く、確実に避けられている。
「無駄、無駄ァ…そんなんじゃ俺のコートすら掠らないよ」
「…大人しく、刺されて下さい。あなたは愛を知らない、」
この罪歌に身を貫かれて、愛されればいい。あなたみたいなどうしようもない外道でも罪歌は愛してくれる。
(愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、…)
五年前から呪詛のように彼女は私に愛を欲しいと叫び続けており、愛に怯える杏里は受け入れ肉体を提供しているだけの関係。
足りないものを補い合っているだけ、園原杏里は愛を、罪歌は肉体を。
「人間はさ、俺のもんだ。」
杏里が振るう刀をナイフで受け流し、眉目秀麗な顔を歪め低い声で呟いた。(邪魔をするな、と)
「観察対象を君みたいな人外に奪われるなんて、気に入らないよ」
平和島静雄いやシズちゃんなら俺は嫌いだからやるよ、片腕で支えられ圧倒的な力の差を見せ付けられる。(悔しい、悔しい…私は彼らの…)
仲を引き裂こうとするこの男に、傷を付けることも叶わないとでもいうのか。
(なら、精神的苦痛を与えればいい)
臨也を斬るのを嫌がる罪歌はそう杏里に提言する。愛する人間に、やらせればいいと。
(でも、どうやって?)
それこそ彼の思う壷なのではないか、人間の行動の一つ一つを予め把握しているだろうしただの暴力では平和島静雄との殺し合いで慣れているだろう。
(……折原臨也を犯せば?男が男に犯されるなんて屈辱以上のものを味わえさせられる)

「さて、君と遊ぶのも飽きた、俺は帰るとするよ」
刀を弾いて素早く袖口にナイフを手慣れた様子で折り畳む。
「くれぐれも…人間には手を出してくれるな、」
よ、と続くはずだった言葉は後頭部に激しい痛みを感じ、真横のゴミ置き場に臨也の体は崩れ落ちたことにより音にはなることはなく。
「さぁ、折原臨也…楽しい宴の始まりです」
杏里はこの方法で臨也を痛めつけることにした。愛されてしまって、幸せになることは彼に許されない。
「く、…」

※※※※※※※※※※

ぴちゃ、水音がする中で臨也は意識を取り戻す。
(確か、俺は…)
痛む後頭部に手を回すと、濡れた音がするので出血していることを確認した。(痛いな)
「母さん、こいつ目を覚ましました」
ぎり、髪を引っ張られ床に叩きつけられる。そこで俺は…視界を遮られていることに気付いてしまう。
「…っ、随分と、酷いことをするね」
手足は拘束されていない、頭部の出血や目隠し以外は特に異変はない。
「何をしても、あなたの予想通りなら、敢えてその通りにしてあげましょう」
「俺にこんなことして、タダで済むと思うなよ」
情報屋を舐めるなよ、と言ったつもりだ。最近の子供は大人をからかって楽しむのが趣味なのだろうが。
「大丈夫です、そんなことも考えられないくらい溺れさせてあげますよ」

※※※※※※※※※※

男の舌が突起に絡みついた時、臨也は声を微かに漏らしてしまった。
「あ、…ゃめ、ああ…っ」
それに気を良くしたのか、次から音を立てて吸い付き、また甘く噛みつかれたりする。
作品名:罪歌と臨也とモブ 作家名:ふじのん