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ヒーローパラドックス・シンドローム

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いつだってきたなく どうやったらおまえだけのひーろーになれるかかんがえてる

「紀田くん?」
「・・・ん あ わりぃ」
ぼんやりしてた。正臣は朗らかに笑い、隣を歩く帝人へ声を上げた。初めてみる都会に浮かれきっていた帝人が初めて不安げに自分を見つめたことに 限りなく微かに安心しながらも、正臣はわざと軽やかな声で池袋の街並みについてうんちくを上げ始めた。帝人はそのひとつひとつを聞きながらも、ふと顔を綻ばせる。正臣は帝人の笑みに目を丸め、疑問をそのまま名前を呼ぶことで表した。
「んーん、何か 変わってないなって。や、外見は凄く変わってて、びっくりしたんだけど」
照れくさそうに、目の前の少年は正臣へ声を上げた。変わってないという言葉に素直に頷くには、正臣は帝人へ秘密にしていることが多すぎる。ぎこちなく笑い胡麻化そうとした正臣に、帝人は気付くことなくにこにこと笑いながら やっぱり と呟いた。
「やっぱり、紀田くんは僕の、 ・・・あ」
「・・・僕の?何だよ帝人。そういう風に途切れられたら気になるだろ」
ちゃんと言えって。正臣は苦笑しながら帝人に言葉を促した。そのまま笑顔をきちんと整ったものにしようと打算的な考えすら持っていた正臣に、帝人は照れくさそうに頬を押さえながら わらわない? と問いかけた。
「時と場合と帝人の言葉の内容によるな」
「笑われそうな気配しかしないよ」
帝人は溜め息をついて、正臣の服を引いた。ゆるゆると帝人に近づいた正臣の耳元に手を当てて、帝人は唇を突き出し数分考えた後、すう、と息を吸った。
「・・・みたいだなって」
目を丸めて帝人の言葉を聞いていた正臣は、聞き終わった瞬間噴き出して帝人に頬を叩かれた。

「将軍?」
「・・・んあー、何でもねえよ。気にすんな」
低い声で呼ばれ、ひらひらと手を振って答えた正臣へ、少年は頷いて視線を正臣からずらした。座りこみ考え込んでいた正臣は、いつしか過去に遡っていた記憶を思い出す作業を中断させる。暗い場所で少年たちに指示を出し、報告を受ける自分の姿は帝人には見せられないなと淡く自虐的に笑った正臣は、帝人が照れながらも呟いた言葉を思い返しながら 当たり前だろ と考える。
(ずっと俺は お前にとっての )
背伸びをして、見栄をはって、頼りがいがあると思わせて、身の丈に合わないことも好奇心だけで乗り込んだ。きらきらとした瞳が、心地よかった。その瞳を決して 逸らしたくは なかった。

(ヒーローで ありたかったんだから)

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非日常に憧れるお前に、届くはずもない俺の気持ち