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だって大人だもん。

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「なんか、2年違うとすげー大人に見えっすね」
「そうかあ? まあ小中学校はそうかもしんねーけど…
 20過ぎたら同じようなもんだろ?」

25歳というのは、静雄が考えているほどに大人ではない。
大卒入社でも大体がまだ3年目だ。
毎日の生活に慣れてしまうだけで、早起きや残業も多少なり無理が利いてしまうだけだ。
大あくびをしているところも、静雄が見ていないだけで今日に入ってもう3回目だ。
まあ、後輩に隙を見せないという点では都合はいいが。

今の仕事は正直なところ結構気に入っている。
何かと恨みを買いやすい仕事ではあるが何より気に入っているのは退屈しないところ。
アメリカが人種のるつぼならば、此処池袋は人格のるつぼだ。
何のために金を遣い、何を道徳や法律より優先させるか、それを知ることにはなかなか
飽きない。
きっちり回収させて頂く以上は、身辺調査も辞さない場合だってある。
より詳細な情報を得れば、自分の歩んだ人生以上に様々な経験があることを知れる。
疑似経験ができる。
それが癖になる。
ノンフィクション小説やパパラッチ週刊誌を読むよりも、よほどリアルだ。

そんなわけで、静雄が俺を大人と思った経緯は分からないが、
もし仕事の面でだとしたら、それはお角違いだ。
事務所の他の先輩を見習ったほうがいい。
何なら、庶務に従事して5年目の先輩を見習えばいい。
可愛くて仕事もできる、嫌みひとつ愚痴ひとつ言わない、彼女のほうがよほど大人だ。

「仕事熱心だなー静雄、いいことだけどな」
「これ首んなったら…俺終わりっすから」

真面目なのだ。とても。
俺が休憩しろって言わなければいつまでだって立っている。
俺が飯でも食うかと言わなければいつまでも空腹で客の玄関前にたっている。
融通はほとんど聞かないが、それはそれで可愛い後輩だ。
従順な犬っころが後を付いてくるのは不快どころか愉快だ。

「トムさん…俺真剣に、トムさんみたいに大人になって、
そろそろ重要な仕事とか、ひとりでもできるようになりたいんすよ…」

役に立ちたいとは前にも言われた。
(トムさんの役に立ちたいんすよ、恩返しもしたいし…
今はまだ、俺公共物壊しちまうから社長にも頭上がらねえし、トムさんにも警察に
話つけてもらったりとかしてますけど…)

焦って突っ走るのが、悪い癖。

「あのな、真面目なだけが大人じゃねーから。」
「…え」
「てきとーに、ゆるーくかわすことと、余裕を持つのも大人の仕事なの」
「…ゆるく、余裕すか」
「そう。例えばな?」

内緒話を聞きに来たような神妙なまなざしで頭を傾けてくる。
少し背伸びをして静雄の耳に口を近づけて、そのまま触れるか皮膚を軽く吸うくらいの
キスをした。おそらく静雄でも何をしたかくらいは分かるはずだ。

「!…トムさん、何で」
「何でも。俺がしたかったの」
「…そーやってまた。ずるいスよ、どうでもよくなる俺も俺ですけど…」
「だって大人だもんさ。そらずるいさ」
作品名:だって大人だもん。 作家名:ゆえん