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「愛おしい」の形

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自分では到底泊まれないような豪華なホテルの一室、俺はシャワールームにいる。ザンザスは無理して取ってくれた休暇で日本へ来ていて、この部屋の主こそがまさしく彼だ。
こうやってザンザスが年に何度か日本に来てくれる時と、長期休暇を利用して俺がイタリアのボンゴレ本部に行く時だけが唯一会える時間だ。それ以外は電話かメールか。それも時差の関係や彼の仕事の関係上そんなに頻繁には出来なくて、二人の時間はとても短い。だから一緒にいられる時には出来るだけ二人で一緒に過ごしている。
今日も学校を休んで(勿論母さんにはちゃんと言ってある)ザンザスの取っているホテルに泊まる。ザンザスがイタリアに帰るのは3日後だ。長いようで短いあっという間の3日間。

俺は脱衣所で体を拭いていると、部屋の方からザンザスの声が聞こえた。
電話だろうか。少し荒っぽい気がする。俺には分からない言葉だから、イタリア語だろうか。ザンザスはイタリア語の他にも語学堪能で、全然聞いたことも無いような言語を口にしている時もある。
髪をタオルでわしゃわしゃ拭きながら部屋に戻ってみると案の定彼はソファーに座って携帯を片手に何か怒っている。いつも以上に眉間に皺が寄って怒鳴っているから、部下からの仕事の話だろうか。俺は仕方なく反対側に腰掛けて彼を見た。
彼は俺が戻ってきたのに気付いて一瞬だけ穏やかな顔で笑うとまた戻らなくなるんじゃないかと思うくらいギリっと顔を険しくして一層の怒鳴り声で何かを叫ぶと電源を切ってしまった。

「いいの?電話」
「あぁ、何でもねぇ」
「でも、」

仕事の話だったらこんなところで油を売っている場合ではないかもしれないし、緊急を要するものならばなおさら自分なんかと居る場合ではないのではないか。と続ける筈だった言葉は全て彼の唇に奪われてしまった。息が苦しくなるほど、体の力が抜けてしまうほどの熱く深い口付けに仕方なく言葉を飲み込む。

「いいんだ、おまえとの時間を無駄にしたくねぇ」

ほんの数センチの距離で綺麗な深紅の瞳が俺を射抜く。こうなると俺はそれに魅入られたように彼以外のことを考えられなくなってしまって、そのまま頭を撫でられて彼はシャワールームに消えた。

彼が出てくるのを待たずに俺はベッドへ移動する。別にこの後のことに期待しているとかそんなわけじゃないけれど、以前にソファーでぼうっと待っていたら出て来たザンザスにお姫様抱っこをされてベッドまで運ばれたのでそれ以来自分で移動しておくことにしている。同じ男なのにこうも違うかと体格差を見せつけられた気がして、悔しさとともに凄く恥ずかしかったのを覚えている。しかもそれを伝えたら「何をいまさら」と笑われたのもとても悔しかったのだ。(俺とザンザスの体格の違いはもちろん知っていたし、彼の裸だって何度も見たのだから自分の貧相な細くて小さい体と彼の筋肉の付いた男らしい体の違いには気付いていたけれど、こうもはっきりとその違いを示されると悔しいのだ。)
彼はシャワールームから上がってくるとバスローブ一枚で、いつもは後ろに流した真っ黒な前髪も額に下りている。その姿がとても新鮮で何度見てもドキドキした。

「ねぇザンザス」

彼は俺が持ってきてテーブルに放置していたペットボトルの水を飲みながら振り向いた。

「本当にいいの?俺なら大丈夫だよ?」

同じ質問を何度もしてザンザスに怒られたり呆れられたりするかなとも思ったけれど、どうしても気になってしまって駄目だった。

「や、違くて…一緒にはいたいけど、次会えなくなるの嫌だから…」

ザンザスが他のことより俺を優先してくれるのは嬉しい。めちゃくちゃ嬉しいけど、それで仕事に支障がでたりしたら仕方なく送り出してくれるリボーンや父さんが何を言ってくるか分かったもんじゃないし、ザンザスが会いに来られなくなったら俺はまだ学生で何も出来ないから彼に会えなくなってしまう。それはもっと嫌なんだ。

「仕事なんてカス鮫にやらせておけばいいんだよ」
「でも」
「そんなことより、」

ザンザスはベッドへ移動してきて俺のすぐ横に腰掛けた。大きな手が俺の前髪を除けて額に啄むようなキスが落とされる。すぐに離れた彼の顔はとても寂しそうに見えた。

「クリスマス、一緒にいてやれなくて悪い」
「…ううん。」

普段の彼からは想像出来ないほどしおらしい姿につい可愛いなと思ってしまう。

ザンザスはそのままするりとベッドに潜ったから、俺もベッドヘッドに預けていた背中を滑らせて彼のちょうど胸に顔を埋めた。彼の右腕で腕枕をして左手は俺の頭を撫でる。視線だけ見上げると彼の穏やかな顔があって嬉しくて俺は思わず微笑んだ。

「おやすみ、ザンザス」
「あぁ、おやすみ綱吉」

俺の頭を撫でる手が温かくて優しくて、気持ち良くて、俺はそのまま眠りに落ちた。


作品名:「愛おしい」の形 作家名:くろ