大空
ツナは高校一年になって、初めて渡伊をした。
空港にはスクアーロが車で迎えに来ていた。
「綱吉、ボスがいつから羽根のエクステを付けてるか知ってるかぁ?」
「ううん。知らない。」
「そうかぁ」
「あいつが羽根を付けたのはなぁ、8年前、自分が九代目の実子ではないことを知った時だぁ。あいつはあの時、全てを知った。自分には”大空”になる資格がないことを知ったんだぁ」
「あれは、大空への憧れなのか、大空を覇するという意味なのか、俺たちには分からなかった。」
「スクアーロでも?」
「スクアーロはザンザスの右腕で、あいつのことは何でも分かってるのかと思ってた。」
「俺は、俺たちは、あいつの望みを叶えてやりたかった。例えそれが、叶わない望みであっても」
「でも違ったんだぁ。あいつが欲しがってたのは”大空”なんかじゃなかった」
「ボスの座じゃないって…じゃあ何?」
「あいつが欲しがっていたのは、”居場所”だったんだぁ。」
「居場所?でもザンザスはヴァリアーのボスだったんでしょ?」
「実の母親に棄てられ、父親だと思っていた九代目にも裏切られていた。あいつは信じていた過去を全て否定されたんだぁ」
「綱吉、お前はボスに”居場所”をやれるのか?」
「お前があいつの”大空”になってやれるのか?」
「俺は、あいつの大空にはなれないかもしれないし、居場所なんてそんな大そうなものはあげられないかもしれない。」
「でも俺はみんなが、ファミリーのみんなが、ヴァリアーのみんなが幸せになって欲しい。」
「そのためなら俺はなんでもする。俺が守ってみせる、全部」