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俺の唯一の大空は、

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ボンゴレが主催するパーティーで旧知の友人と再会した。お互い忙しい身のため本当に久々の再会で、目が合った瞬間に彼は嬉しそうに目を輝かせてこちらにやって来た。

「スクアーロ久しぶり!元気してたか?」
「あぁ。相変わらずお前も元気そうだな」

そもそも俺がこのパーティーに出席しているのは自分の意思ではなく、我が主君XANXUSと主催ボンゴレファミリー十代目ドン沢田綱吉の命令だからである。あの二人に言われたのでなければこんなにつまらない催し物に参加などするはずがない。ちなみにXANXUSは「自分だけが嫌な思いなどするものか」と言って俺が断れないように命令し、綱吉は「XANXUSを見張っていてくれ」とこれまた断れないように命令をしてくれた。どちらにせよ最悪な二人に巻き込まれた形である。
つまらなくて退屈。ましてや自分にとって厄災の根源と言ってもいい二人の護衛という名目で連れて来られている以上途中で帰るわけにもいかずほとほとうんざりしていたところに彼の登場。正直助かったと息を漏らした。

「珍しいな、お前がこういうとこ出てくるの」
「仕方なくだぁ…」
「そっか」

濁した言葉尻に何となく俺の心中を察したのかディーノは苦笑する。
パーティー用にいつもより着飾った服装ときっちりとセットされた髪型。おおよそマフィアのボスとは思えぬ柔和な雰囲気を醸し出している男はさながらお伽話の王子様のようである。

「馬子にも衣装だな」
「あ、似合う?」
「へなちょこには見えねぇ」
「ひでぇ」

お互い幼い頃から知っている友人だ。言葉も気持ちも知らず穏やかなものになる


「お前も髪結うことあるんだな」

いつもは素直に下ろしている長い銀髪を今日は左肩で一つに束ねて前に下ろしている。

「これだけ人でごちゃごちゃしてるしなぁ」
「へぇ。スクアーロにそんな良心が、」
「他人が髪に触れるのが不愉快なだけだぁ」
「不可抗力じゃね?」
「それでも嫌なものは嫌なんだぁ」

楽しそうに笑うディーノが分からずじとりと視線を向けると「わがままだなぁ」と言われた。

「だったら切ればいいんじゃねぇの」

こいつは俺の髪にかけた誓いを知っていながらいつも切ってしまえと言う。

「なんか恋する乙女みたいな。」
「はぁ?」
「貴方に操を立てて髪は誰にも触れさせません、て感じ?」

この髪は一生XANXUSについていくと、あいつの剣になるという誓いだ。覚悟だ。
それはあいつが十代目にならなかろうとも、誰に負けようとも変わりはしない。俺は誰に指図されたわけでなく、あいつを必ず高みへ連れていくと決めたんだ。そして、何があろうとも必ず傍らに付き従うと。

そう言うと目の前の男は大袈裟にため息を吐く。そして左胸に垂れた髪を掬う。

「あんな奴のどこがいいんだかね」
「テメェには分からねぇよ」
「ハイハイ、ご馳走様です」

わざとらしく恭しい動きで髪束にキスをする。こういう仕草が本当に似合う奴だ。マフィアのボスなんかにしておくのが惜しいとさえ思わせる。だが、彼の内に秘めた獰猛な獣を俺は知っている。

「じゃあ俺行くな」
「あぁ」

パーティー中も忙しく呼び止められては談笑している。それをなんとなく眺めていると視界の端に我がボスが映った。壁にもたれて不機嫌を撒き散らしている横で苦笑しているのは綱吉か。二人でいる分には安全だろう。

パーティーが終わるまで俺はまたつまらない会場を眺めながら過ごすことにした。

作品名:俺の唯一の大空は、 作家名:くろ