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高飛車英国人と熱血日本男児

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 イナズマジャパンとナイツオブクィーンの試合は、イナズマジャパンが勝利を飾った。
 エドガーが繰り出した真のエクスカリバーを何度も防いだ為に、円堂のグローブは擦りきれ汚れていた。凄い威力だったな、と自分の両手を見ながら試合の余韻に浸る。
 と、壁山と立向居が驚く声が聞こえた。
 何だろうと思って顔を上げる。勝利を喜ぶイナズマジャパンのメンバーの間をすり抜けるようにして、エドガーがこちらに向かって来ていた。
 いつもなら綺麗に背中に流れている長髪は試合が終わったばかりで整えていないのだろう、若干乱れている。ユニフォームも当然汚れていた。
 まだ知り合ったばかりで彼の人となりをよくは知らないが、彼の気障でスマートなイメージに似つかわしくないくたびれた姿だった。円堂は妙な親しみを感じた。
 そんな感情の機微を察したのかどうかはわからないが、円堂の前に立ったエドガーは、優雅な微笑みを浮かべるとスッと手を差し出した。
「いい試合だった」
「ああ!」
 エドガーの手を取ろうとして、だが円堂は「あっ」と声を上げて腕を引っ込めた。何事かと見つめてくるエドガーに照れ笑いを見せる。
「悪い悪い。お前、汚れてるの嫌いだったよな」
 エドガーから招待されたパーティーでの一件を思い出したのだ。白いタキシードでビシッとキメた彼は、いかにも紳士といった様相で、まだ十代半ばの少年だとは思えなかった。もっと大人に見えた。
 完全には綺麗にならないがそのまま握手するよりは良いだろうと思い、円堂が自分のユニフォームで手を拭おうとすると、エドガーは「待て」と制止した。
 素直に動きを止めた円堂の汚れた手を、エドガーの手は躊躇なく掴み、そのまま強引に力強く握った。
 驚いた顔をしている円堂を正面から見つめるエドガーの目は真剣だ。開いた唇から出てくる言葉もまた同じ。
「私のエクスカリバーを止めた手だ。汚くなどない」
 それを聞いて、円堂はニカッと笑った。エドガーもフッと晴れやかに微笑む。
 互いのチームメイトや観客が歓声と共に見守る中、二人はしっかりと握手を交わした。
 エドガーはふと真顔に戻ると、円堂の手を更にギュッと強く握る。
「? エドガー?」
「……私はバルチナスの家名を継ぐ者として、常に競争相手を蹴落として生きてきた。パーティーに土まみれのユニフォームでやって来た君を見た時は、君もその一人に過ぎないと思っていた」
 彼は今、大事な話をしようとしている。そう感じた円堂は黙って耳を傾けた。
「だが、勝ったのは君だった。見事だ。おめでとう」
「ありがとう。でも、これは俺だけの勝利じゃない。仲間のおかげで勝てたんだ」
「……フッ、君らしい答えだな。そんなところも好ましいよ、守」
「へ?」
 唐突に下の名前で呼ばれて目を見開いている円堂を、エドガーは挑発的とも思える視線で見る。口元には不敵な笑み。
「またいつか機会があればお相手願いたいものだ」
 円堂のグローブを外してキーパーらしいしっかりした手を露にしたエドガーは、恭しく引き寄せると、ちゅっと手の甲に口づけた。
「――っ!?」
 円堂は思わずバッと手を払った。予想していなかった事態に顔がカッと熱くなった。エドガーはその反応を楽しそうに見ている。
「そんなに嫌がらなくてもいいだろう?」
「な、な、おまっ」
「強い者は美しい。私はそんな君に敬意を示したかった。それだけだよ」
「う、美しいぃ……?」
「ああ。君はとても美しい」
 仲間達からまっすぐな信頼やきらきらした憧れの眼差しを向けられるのも、対戦相手から突き刺さるような敵意をぶつけられるのも、勝負の後に互いに敬意を抱くのにも、円堂は慣れていた。
 だが、こうして同性から手にキスをされたり美しいと言われたりするのは初めてだった。
 外国人って皆こうなのか、と混乱したが、今まで知り合ったどの同性の外国人も帰国子女にもこんな事はされていない。
「円堂さんに何してるんですか!」
「ケダモノ!」
「色ボケ貴族!」
 イナズマジャパンから浴びせられる非難の声を涼しい顔で聞き流しているエドガー。ちなみにナイツオブクィーンの面々は呆れているようだ。
 彼の好意を素直に受け入れたなら、きっと知らない世界と新しい価値観を見る事が出来るのだろう。そう円堂は直感していた。