いつもの
「チィース、あ、ルッス姐さん」
「あら、タケシちゃん。お久しぶりね」
スクアーロの部屋に行く前に談話室に寄ったら、カップを片手に休んでいるルッスーリアがいた。
「スクアーロならいないわよ」
「え、そうなんスか」
「本邸に呼び出しよ」
紅茶飲む?と席を立ったルッスーリアに甘えて俺も貰うことにして、革張りのソファーに腰を下ろし担いできた愛刀を肘掛に掛ける。
「はい、どうぞ?」
「ども。あ、本邸に呼び出しって?」
「あぁそれがね……」
苦笑を浮かべて、少し言いづらそうにしているルッスーリア。
余計に気になって先を促すと、重い口を割って話してくれた。
「この間、うちのボスとツッくん派手にケンカしたじゃない?あれ二人まだ続いてるみたいで、呼び出しはぜーんぶスクアーロなのよ」
“この間のケンカ”というとツナの執務室が半壊したあれのことだろう。
ツナ曰くあれはツナとザンザスのケンカというよりは途中で入ってきた小僧が引っかき回したという話しだったように思うが。
「まぁでも、もうすぐ帰ってくるとは思うわよ」
「俺は今日一日オフなんで、帰ってくるまで待ちますよ」
「ほーんと、タケシちゃんとスクアーロって仲良いわよねぇ、羨ましい」
「友人であり、俺の師匠っスから」
今日は友人としてではなく師匠として稽古をつけてほしくてヴァリアー邸まで足を運んだ。剣士として稽古をつけてもらえるのはスクアーロだけだし、鈍った体に活を入れるには彼でなくてはならない。
「アタシも了ちゃんにお稽古って言って誘ってみようかしら。最近全然捕まらないのよね」
ルッスーリアが立ちあがった瞬間、扉がものすごい音を立てて開かれた。
「あらスクアーロ。お帰りなさい」
「う゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛い゛、ったくやってらんねぇぜぇ!」
「おかえり、スクアーロ」
予想外の俺に驚いて一瞬動きが止まったが、ドカリと勢いよくソファーに座る。
ルッスーリアはスクアーロにも紅茶を用意するつもりなのかそのまま行ってしまった。
「なあスクアーロ、稽古つけてくれよ」
「はぁ!?今日は店終いだぁ」
「えーなんでだよっ、俺休みなのにわざわざ来たんだぜ」
「文句ならテメェんとこのボスに言えっ」
戻ってきたルッスーリアがクスクスと笑って、三人分のカップに紅茶を注ぐ。
スクアーロは何が気に入らないのかルッスーリアを睨みつけて、ルッスーリアはそれにまた笑った。
「なに笑ってがる」
「ううん、兄弟みたいねって思って」
「あ゛ぁ゛?」
「タケシちゃんもいい年して子供みたい」