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クーガーとカズマは何気にテレビを見るのが好きだ。

娯楽番組にドラマとスポーツ、
とあるクイズ番組ではクーガーは1千万を獲得したことさえある。
残念なことにテレビの前で答えていただけで出演こそしなかったが。
くだらない番組(クーガー談)や、つまんねえニュース(カズマ談)三分間クッキング。
柔らかいソファに座ってあれこれネタにしながら、けっこう盛り上がるものだ。

時折ささいな意見の分れで小規模な喧嘩をしたりするが、
おおかたは番組終了時そのままソファに二人して沈み込むのが常である。




映画の主題歌がゆっくりと流れた。
洋楽なのでカズマには全く何を歌っているのか分からないけれども。
クーガーは知っているのか、広げた新聞に目を向けつつ口元がかすかに動く。

「なあ」
「ん?」
「隕石ってほんとにぶつかったりすんのか?」
どうやらさっきまで放映していた映画の内容がカズマには気になるらしい。
「さーてな。ぶつかるんじゃないか?」
いつかは知らないが。
クーガーは笑いながら答えると、折り畳んだ新聞を床に投げる。
落ちた拍子に今日の夕刊から英字新聞が少しはみ出した。
クーガーは言語の違う新聞を二紙とっている。
カズマには、はっきり言って何が面白いのかさっぱりだ。
それは新聞自体もさす。
細かい文字を目で追うと頭痛がしてくる気さえする。



「まあ、俺が生きているうちは有り得ないけどなぁ」
自信ありげに言うと残り少ないミネラルウォーターを一気に喉へ流して。
それをペットボトルと表示されたゴミ箱へクーガーは投げた。
カズマはちょっと外れろ、と思った。
ゴミ箱の上にはスーパーの特売チラシを再利用したスコア表。
ソファからそこまでボトルが入るかどうかの賭けは、
13対7で
カズマの惨敗中である。
しかし、ボトルは正方形に開いた口に見事にすい込まれる。

続いて鳴る、カラン、とゴールのホイッスル。
「14点」
ふふん、とクーガーが鼻で笑う。
当然ムカッときたカズマは軽く握った拳でこれまた軽いパンチをする。
「んで、そんなこと分かるんだよ!」
全く威力のないそれを慣れたものだと受け止めて。
そりゃおまえ、
俊敏だが厚みはあまりない肩を押すようにカズマを自分の下に寝かせる。
嬉しそうにソファの上に広がった茶褐色の髪や、
クーガーが動きやすいようにと両足の間隔をとる仕草がなんとも愛しくて。
「そりゃおまえよく言うだろ?」
ふざけるように顎先に口をつけたら、ふざけるように前髪をひっぱられた。

「俺の恋路を邪魔するやつは俺に蹴られて死んじまえ、てな」

隕石を蹴る気かよ……。

カズマは自分の胸にあるオレンジの髪を両手でかかえ、指を絡める。
首筋へ降ってきたキスに、シャツをめくり背中を愛撫する手に、
弱い電流が走ったような感覚に、徐々に息をあげながら。

そしてふと、クーガーの足癖の悪さを思い返し。
どこかで納得、ともうなづいた。



「……あ、イングランド勝ったってよ」
倒されたまま横目で放送するニュースの内容を伝えたら。
こっちに集中しろとばかりに顔を固定されて深く口を塞がれた。

こうなると、あとは現在世界中を巻きこんでいる熱気より激しい、
もうずっと前からカズマをのめり込ませている熱に身をまかせるのみだ。
作品名:シネマ付き 作家名:むぎこ