カイトとマスターの日常小話
小さく文句を言って、ぶしっ…と、色気のないくしゃみをして、マスターは身体を起こすと僕の腕を掴んだ。
「…防水加工してあるって言っても、精密機械だからな。早く、上がって体拭けよ」
僕を立たせてくれたマスターはそう言って、シャツの裾を絞る。
「僕は大丈夫です。それより、マスターの方が…」
「いい。風邪引いたら、お前に看病してもらうし」
「…マスター…」
「帰るか。しょっぱいのも思い切り、堪能できたことだしな」
優しい言葉をくれたと思ったら、これだ。言葉に棘がある気がするのは、僕の気の所為だろうか?
案の定、マスターは家に帰るなり、寝込んでしまった。
ひどく辛そうなマスターにココロが痛む。僕はVOCALOIDだから、風邪は引けないし、変わってあげることも出来ない。一生懸命、ちゃんと看病しますから、マスター、早く元気になってくださいね。
「アイスクリームの歌」、早く、歌いたいですから。
マスターが喜んでくれるように、歌いますからね。
オワリ
作品名:カイトとマスターの日常小話 作家名:冬故