カイトとマスターの日常小話
マスターはバックの中から、線香の束を取り出し、ライターで火を着けた。
「お前の分」
「ありがとうございます」
マスターが線香を手向けるのを真似をして線香を手向ける。マスターは手を合わせ、目を閉じる。僕も同じように手を合わせる。
「…これが、俺の新しい家族。…何とかちゃんとやってるから見守っててくれよな」
「カイトと言います。マスターのことは僕がちゃんと責任持って、お世話しますから心配しないでくださいね」
僕の言葉にマスターの眉がぴくりと上がる。
「何で、お前に面倒見られなきゃならないんだ!見てるのはこっちだろうが!!」
「何、言ってるんですか!!僕がいなきゃ、ちゃんとご飯食べないし、掃除も片付けもしないじゃないですか、マスターは!!」
「何を!!」
「その通りでしょう!!」
僕とマスターは暫し、睨みあう。その間をふわりと暖かな風が頬を撫でた。
「…あー、この通り、仲良くやってる」
「はい。仲良くしてますから」
まったく、こんなところまで来て何をやってるんだろう。僕とマスターは。でも、これが僕とマスターの関係だ。このままでいいのだと思う。
「報告も済んだし、帰るか」
「はい」
僕とマスターは振り返る。
「また、来るな」
「また、来ますね」
『待ってるよ』
返事をするように、線香の煙が揺れたような気がした。
おわり
作品名:カイトとマスターの日常小話 作家名:冬故