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くだらなくも優しいそんな日常

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どうでもよさそうに振り払ったタバコの灰が畳の上に染み付いたように残って、銀時が「あーあ」とどうでもよさそうに声を出した。それに続いて新八が銀時の側まで来て、持っていた雑誌を銀時の頭に思い切り叩きつけて「あーあ」と同じように繰りかえした。

「ちょっと。コレ、どーしてくれるんすか」
「うーん。どうしよう」

そう言って首を傾げた銀時の白い髪が揺れた。多分、どうにかしようなどとこの人は考えちゃいない、と新八は思ってため息をついた。掃除するのは自分なのだ。ここで余計な言い合いで体力を消耗してしまうのは賢くない、と判断してとりあえず銀時に立ってください、と服の袖を引っ張った。
えー、と銀時が子供のように唸って、新八はいつものように適当に、はいはい、と返事をしてソファのある部屋までずるずると引き摺って移動した。これでも銀時は大人なので重いのにも関わらず(途中の部屋の境界線である段差に、あだだだ、と云いながらも)引き摺られていった。

「新ちゃ―ん」
「なんですか」

呼べば必ず返事。拗ねれば返ってこないが、銀時が呼べば新八は必ず返事を返した。そんな日常的なことに銀時は嬉しくなって。
「あのよぉ」ソファの側に置いてけぼりにされたまま、銀時は新八の背中を見やって、にやん、と笑った。
ただ笑っただけで言葉はなくて、新八は怪訝に思って振り向いた。少し眼鏡がずれているけど。

「なんすか。ていうかなに笑ってんですか。気持ち悪いですよ、うわ、キモーイ」
「・・・銀さん傷ついたよ今の。すごいダメージなんですけど」
「知るか」

ああなんでこんな口の悪い子に。いや、あの姉があってこの弟でも可笑しくないか、と銀時は罰当たりなことを頭の端っこで考えてもう一度新八を呼んだ。

「今日は買い物行くのか?」
「そのつもりですけど。…あ、銀さんもついて来てくださいね。荷物持ちに」
「はいはい」

喜んで、と続いた声に嫌味な感情は込められてなかった。少しその心理が気になるけど、なんだか今日は春でもないのに暖かい日なので、そんな些細なことを深く考えるほどの思考を新八は持っていなかった。
ただ畳に染み付いたように濁ったタバコの灰を見下ろし「あーあ」と小さく声にしてため息をついた。だけどもういいか、と思う。適当に拭いてそれでいいか、と呟くと、ソファによじ登ったらしい銀時が「そうしとけ、そうしとけ」と言った。
誰のせいでこうなったと思ってんだよ、と新八は一言漏らしたけど、銀時はそれには気づかないふりをして側にあった新聞を読み始めた。
ああ、もう。だから最近神楽ちゃんもそれを真似して新聞読み始めたんだよなぁ、とおもった。
世の中の情報を知ることは良いのだろうけど、それが良い事なのか、悪いことなのか、新八にはよく分からなかった。なにせ、銀時の真似をしてるので。
そして新八はその上司にお茶を入れるために、台所へと足を動かした。