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ギルマシュー小説その2

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参った、もうマジ参った。…これは降参だな、うん…。



「あー…マシュー…」

「はい?どうしました、ギルベルトさん?」





「お前のことが好きだ」










「へっ………?」



ポッカーンっと呆気に取られるマシューの姿は、まあ想定内ではあったけれども。



「俺様の負けだよ。お前が好きだ」


「う…そ……っ!」


「嘘だ!うそ!うそ!!ぎ、ギルベルトさんが、ぼ、僕のことを好きだなんて……うそだっ!!」

「っおい!!なに言ってんだよ!?お前が望んでいたはずの言葉だろう!?」

激しい拒絶を見せるマシューにギルベルトは眉を顰めた。
最初にこいつが俺のことを好きだとかぬかしてきたんだろうが!!何故こっちが受け入れた途端跳ね除けようとする…!訳がわからないとギルベルトは乱雑に髪をかきあげる。

「だ、だって…っ!」


――貴方はフェリシアーノさんが好きなはず…っ!

ああ、俺はフェリちゃんが好きだった。

――報われないとわかっていても、ずーっと思い続ける、続けられる、って言って。

ああ、確かにそれも言った。あの子は俺にとって太陽で、他にまたとない至宝の宝珠のようだった。


――じゃあどうして…!!どうしてフェリシアーノさんが好きなのに…!僕に特別な想いを持てないって言っていたのに!!そんな大嘘つくんですか…!?




偽りの優しさなんていらない…!紛い物の幸せなんていらない…っ!貴方がそんな人だったなんて…っ、残酷なこと、知りたくなんてなかった…!!

同情なんて、ごめんだよ……っ!!

顔を覆い全てを拒絶するマシュー。
それだけギルベルトの言葉は強烈すぎた。



ッ!、――…っフェリちゃん以上にお前を好きになっちまったからに決まってるだろうが…っ!!!




!!!



叩きつけるかのように言葉を吐くギルベルトに、さしもマシューはビクリと身体を跳ね上がらせた。


いいか、よく聞けッ!!…俺は自分にメリットのない嘘なんてつかねえ…!意味がねぇからな…!



――いつでも献身的に俺を見つめるお前の眼差しに、優しい笑顔に、いつの間にか好きになっちまったんだよ!






なあ、お前知ってるか?お前、嬉しい時すげーいい匂いするって。

…え?

マシューには身に覚えのない事象に、パチパチと目を瞬かせる。

やっぱり気付いていなかったか。はあとため息をつくギルベルトだが、――だけど自分も人のこと言えねえよな、最近言われて気付いたことだし…ブツブツと訳のわからないことを呟いている。

「あの…?」

「お前、喜んだり笑ったり、飛び上がるくらい嬉しいことがあった時お前の側からいい匂いがするそうだ。」

その不可思議の事象に回りの皆が気付いて辺りを調べたんだがその物的証拠が見つからなかったそうだ。そのうちお前の持ち物、身に着けてるものが怪しいと睨んだみたいだ。身に覚え、あるだろ?

問いかけられて、そういえば、と思い出すことが。
ある日自分の片割れであるアルフレッドが知人と称する人々を引き連れて家にやってきたことがある。その同伴メンバーに急に身体検査だなんて言われて手持ちの所持品をだしたこと、衣服を捲られた(さすがに脱がされはしなかった)ことがあった。どうしてこんなことするのだろうと不思議に思ったのだけど、理由を尋ねたら恐い顔で、極秘だと口止めされてしまい、それからは聞いていない。


「…で、色々調査した結果、わかったことが三つ」


一つ、いい匂いは『マシュー』自身からすること。

二つ、そのいい匂いはマシューが喜ぶ度に増していくこと。

そして最後に、



最後に、っと言ってギルベルトは言い淀んだ。



「…最後に、なんですか…?」

気になる答え。きゅうと締め付けられる胸の奥底。大いなる不安と、でも相反した確かな期待。


ねえ、ソレはなに…?



「…『俺』といる時に一際強く匂ってくる…だとよ…」

「!!」

思ってもいなかった答えにマシューは言葉をなくす。


「…『いい匂い』っていうのは、お前が持ってくる『アレ』だ」

ギルベルトが示す『アレ』…。

「わかるよな。―――………お前得意のメイプルシロップだよ」


「あの匂いが僕から…!?」


「ただのメイプルシロップじゃないだろう…?『幸せ』のメイプルシロップだ。そのいい匂いが、…俺が近くにいる時に強く匂ってくる、だそうだ」

あまりのことにマシューは呆然とした。全然気づかなかった。そして気づこうとしなかった。

マシューの様子を見ながらギルベルトは続ける。



「…それを聞いたとき、正直俺はどうしたらいいかわからなかった。俺はフェリちゃんが好きだし、でもお前から好意を持たれているって色々戸惑っていたし…。」


だけど暫くして言われたんだ。



――本当にマシューさんはギルベルトさんのこと好きなんですね――



自分を師匠だと敬っているのか面白がっているのか、黒髪小柄な男は楽しそうに言ってのけた。


悟いこいつはあっという間に自分たちに流れている空気を読み取ってしまったらしい。その前にマシューの調査をしてから結びつけたようだが。


――…ああやばいな、と思った。なんでだよ、と罵りたかった、自分に。どうして今の今まで気づかなかった…?嬉しそうに切なそうに自分の近くにいるやつのことを。

――近くにいるからこそ、気づかなかったんですね。

存外鼻の感覚は鈍りやすいですから。


でも、

これ以上の笑みをその読めない顔にのせ、そして




――失くしてその大切さに気づきなさいませぬように。

私が言えることはそれだけ、でしょうか……。



喰えない奴のありがたい忠告に言葉がでなかった。


いつの間にか当たり前になってしまったのだ。求めれば得られる無条件の優しさに。温かい笑顔に。



いつの間にか、掛け替えのないものになってしまった。




気づいた瞬間、腹は決まった。あの子に捧げた筈の想いとは別の方向で、欲しいものができたのだ。


だから、なぁマシュー。




「俺は、お前が好きなんだよ…」










「ぼ、僕は…っ!!」

あ、貴方のことが好きでっ、本当に大好きでっ!で、でも応えてくれるとはずっと思っていなかったから…!!

ああ、

貴方じゃないけど、想うだけなら罪にならない…って、独りよがりの感情だけど、それで十分だって…、自分で思い込もうとしたのに……っ



ああ、ああ…!


「……こんな俺を好きになってくれて、――ありがとう」

「…っふぇ…、ギルベルトさ…!」

ぽろぽろ、ぽろぽろ零れ落ちる涙。珠のように純粋で綺麗な涙。

たまらずに抱きしめた。


「ったくよう…。お前も趣味悪いよな。こんな難しい思考している、天邪鬼な俺なんかを好きになって」

「ぅーー~~…っ。…い、いくらギルベルトさんでも、『僕の好きな人』を馬鹿にすることは許しません……ッ」

しゃくりあげながら、腕の中に収まる愛しい存在。

俺自身が悪いって言ってるのに、それを許すことをしない。

ああ