くっきー
俺が買ってきてやった電気タイプに最適なポケモンの菓子。
それを頬張りながら、ピカチュウはレッドの問いに頷いて機嫌のいい声を上げた。
当たり前だ。結構いいとこで買ってきたんだからな。
次の欠片へと手を伸ばすピカチュウを見て、レッドは嬉しそうに微笑んだ。
「あんまり食わせすぎんなよ」
「うん」
小さな手が新しい欠片を手に持ったのを見て、レッドは残りが入っている袋の口を閉めた。
途端に残念そうに顔を歪めたピカチュウ、その頭を撫でながらまた明日ねとレッドが言えば、渋々諦めたらしく、手の中の菓子をかじり始めた。
早々となくしてしまうのが勿体ないのか、一口が小さく、ほんの一欠片を食べるのに大層な時間をかけている。
「よっぽど気に入ったみたいだな」
「うん、…ありがと」
「いいよ、ついでに買ってみただけだし」
時間をかけると言ってもやはりたったの一欠片。
菓子はすぐにピカチュウの腹の中へと消えてしまった。
ピカチュウはしっかりと閉じられている袋をじっと見て、その後訴えるようにレッドを見上げる。
しかしレッドが首を振ると、今度こそ諦めたのか、洞窟の外へと飛び出して行った。
遊びにでもいくのだろう。この雪山では雪で遊ぶ以外に選択肢はないだろうに、飽きたりしないのか?
雪の中へと消えていくピカチュウを見送っていると、少し離れた場所に座っていたレッドが俺のすぐ傍まで移動してきた。
俺が使っていた毛布を広げてレッドにもかけてやる。
そこで一つ思いだし、横に置いてある、今日買い込んできた食料が入った袋を漁った。
「…そうそう、これはお前に」
「?」
言いながら取り出したのはクッキーの袋。
昔からレッドが好んでよく食べていたものだ。
「久しぶりだろ?これ」
「…うん」
返事は短く素っ気ない感じだが、目は期待の色に染まっている。
封を開けて一枚取り出し、素直に開かれたレッドの口にそれを入れてやる。
懐かしい味に嬉しそうに微笑んだレッドを見て俺も笑う。
やがてそれを飲み込んだレッドがじっと俺を見つめてきた。
その様子がさっきのピカチュウと被って見えてなんだか可笑しかった。
ポケモンがトレーナーに似たのか、それともトレーナーが似たのか。
俺はこの可愛い小動物のお望み通り、また一枚口に入れてやった。