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掃除当番、手伝って

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〈ミサキはメアリーに言いました。〉


最後の句読点を書き終えると同時に四時間目終了を告げるチャイムが鳴り響く。
今日はここまでにすると言って教師が教室から出ていくと、クラスが一気にざわついた。
教科書やノート、筆記具なんかを片付けると、みんな鞄を持って外へ出る。
行き先は他クラス、空き教室、中庭、屋上など様々だ。
共通しているのは、みんな今からお昼ご飯だっていうこと。

ゆっくりと机の上を片付けている間に、もう教室には僕一人だけになっていた。
いつもそう。
この教室は校舎の一番奥にあるから人が集まりにくくて、クラスのみんなは自分から他の場所へと移動する。
…僕を除いて。
僕は移動する必要がないんだ。
だって、

「悪い、ちょっと遅くなった!」

向こうから来てくれるから。

教室に駆け込んできた人、…グリーンを見れば、走ってきたのか少し息が上がっていた。
今日は時間割変更があって、グリーンのクラスの四時間目は体育になっていたはず。
だから、遅くなるのは仕方がない。

「時間あるから、大丈夫」

僕の前の席の椅子を勧めると、グリーンは座って背もたれに身体を預け、大きく息をついた。
この時期の体育は持久走だから疲れてるんだろう。
自販機で買ってきたらしい缶ジュースを開けて一気に呷っている。

「…お疲れ様」
「おー、マジで疲れた…」

僕が鞄からお弁当を出すと、グリーンも缶を片手に鞄を漁ってパンを出した。
まだ残っていた缶の中身、その最後の少しを僕が貰って飲み干し、空になった缶を教室の後ろのごみ箱に捨てにいく。
途中でなんとなく面倒になり、立ち止まって缶を投げてみた。
飛んで行ったそれは大人しくごみ箱の中に収まってくれた、…なんてことにはならなくて。
縁に跳ね返され、カラカラと乾いた音を立てて床に転がった。
…結局、直接捨てにいく羽目になってしまった。

「だっせー」
「…うるさい」

茶化したグリーンを軽く小突いてから椅子に座る。
グリーンは既にパンをかじり始めていて、それを見て僕もお弁当の蓋を開けた。



運動部の昼練習の遠い掛け声。
クリアに聞こえるそれが、この教室が酷く静かだということを物語っている。

「なあ、この黒板のやつってリーディングだろ?」
「うん」
「…俺のとこ、メアリーどころかまだ動物保護の話なんだけど」
「それ、…一ヶ月前に終わった」
「マジかよ、…うちの英語担任、無駄話多いからなぁ」

そんな他愛ない話が僕とグリーンの二人だけしかいない教室に響く。
同じようなゆるい会話を何度か繰り返すうちに、グリーンが先に食べ終わった。
立ち上がって、パンが入っていた袋を丸めてごみ箱へと投げる。
真っ直ぐに飛んで綺麗にゴールインしたそれ。
投げた位置はさっき僕がやったのと大体同じ場所で、…なんか、悔しい。

「俺ってすげー」
「…そうやって言うところが、ださい」
「負け惜しみで言われても痛くも痒くもねーな」
「む…」

言い返せない。
やっぱり悔しい。

「そんなにむすっとすんなよ」
「…してない」
「してるだろ」
「してない」
「意地張っちゃって、かーわいーの」
「……」

グリーンが僕の横に立って頭を撫でてきた。
髪がくしゃくしゃになるけれど、悪い気はしないし、落ち着く。
結局これでごまかされちゃうんだから、…ああ、僕って単純。

「どーしたら機嫌直してくれんの?」

もうとっくに直っているのだけど、それに気付かずにグリーンは聞いてくる。
…せっかくだから利用してやろうか。

「今日の掃除当番、手伝って」
「お安い御用で」

今日はグリーンの当番が休みだと知った上で、僕は言う。
うちの班はサボりが多いから、その人達の分まで存分に働いて貰おう。
そう思いながら、僕はやっと食べ終わったお弁当の蓋を閉じた。
作品名:掃除当番、手伝って 作家名:るう