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お風呂にする?ご飯にする?

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虚圏から現世に戻った雨竜のアパートには何故かペッシェが居候していた。
だがこのペッシェが曲者だ。
雨竜にとって思いもかけないことを考え出してくれる。
先日もだった。
「雨竜、服を作るのが得意だってな。ならば私にも二枚作ってくれないだろうか?」
「何で僕が君の服を作らなければならないんだ………。」
雨竜の機嫌はもちろん低気圧である。
だがペッシェにはそんな事は関係ないのである。
元来の押しの強さにものを言わせて雨竜の両肩を掴んで頼み込む。
「頼む!エプロンと割烹着だけでいいんだ!」
「エプロンと割烹着?」
ますます分からない。
だがペッシェはこの上なく五月蝿い。
おまけにふんどしいっちょだ。
雨竜は諦めて裁縫セットに手をやった。




夕方。
雨竜は学校から帰宅すると、アパートの前で息を大きくついた。
ペッシェの居候生活。
あまりにも振り回される自分が情けないが、ため息をついても状況は変わらない。
雨竜は諦めて扉を開けた。

そこにはペッシェがエプロン姿で立っていた。

「お帰り、雨竜。」
そう言って彼はさっさと玄関を閉める。
レースのフリルはペッシェのお気に召したらしい。
目の前で蝶の如くひらひら揺れる。
そして彼は鍋を手にしたまま目だけ楽しげに笑った。
「ご飯にする?お風呂にする?それとも私かい?」
「気色悪い事を言うな―――っっ!」
雨竜のアッパーカットがペッシェの顎を直撃する。
ペッシェが頭から転んだ。
その瞬間、雨竜は絶句した。
『何か見たくもないものが見えた気がするのは気のせいか?』
だが必死でその考えを否定する。
『いや、考えるな……考えたら負けだ……』
雨竜は勤めて冷静さを保とうとした。
そして震える声で言う。
「じゃあ、僕は風呂に入ってくる。沸かしてくれたんだろう?」
「ああ、バッチリだ!」
ペッシェは元気に返す。
あまりの元気の良さに一抹の不安を感じながらも雨竜は浴室へと足を運んだ。
………が。
「うわあああああっっっ!」
浴室の惨状に雨竜は思いっきり悲鳴を上げた。
緑色の粘液様の物がそこに溜まっていたのだ。
「なんなんだ、これはー!」
雨竜の叫びにペッシェが背後に立って楽しそうに笑った。
「はっはっはっ!愛のインフィナイト・スリップを枯渇するまで溜め込んだのだ!」
「気色悪いだろう!」
「全部、愛故だ!」
雨竜はどっと疲れた。
一日の疲れを癒すはずの浴室がこんな惨状になっているのだから仕方がない。
と、ペッシェが己の前をくるりこくるりこ回っているのに気がついた。
「なにやっているんだ、君は………?」
疲れたように問う雨竜にペッシェは明るく返す。
「気付かないのか、雨竜?」
「何でも良いが、出来れば気付きたくない気がする………。」
「そういうなよ、雨竜。そう、私はやったのだ!」

「ふんどし脱いで夢の裸エプロンというやつをな!」

「っ………」
くらっ。
雨竜の身体がかしいだ。
それをペッシェが慌てて支える。
「駄目じゃないか、マイハニー!」
「誰がマイハニーだ!脱げ!さっさと脱いでくれ!僕の作った物をそんないかがわしい目的に使うな!」
怒鳴る雨竜にペッシェが楽しそうに笑った。
「そうか、裸割烹着の方が気に入りなんだな!着替えてくるから待っていてくれたまえ!」
「問題が違うー!」

今日も雨竜の部屋は大賑わいだった。

(おわれ)