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DA5新刊「君の 知らない 街での 話」サンプル

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 その日、路地裏のゴミだめの中に、黒とか半透明のゴミ袋の山のなかに埋もれていた男の子を見たとき、私は、あぁ、死体だなぁって、何の疑いもなく思って、それから少し考えてから、かみついてきたらイヤだなと思ったから、ちょうどいい具合に足下に転がっていた手のひらサイズの小石を拾い上げて、えいって死体に投げつけた。
 こういうのって、外れるのが常なのだけど、その時は小石は綺麗に死体の頭にヒットして、なので、楽しくなって二個、三個って、私は石を投げ続けたら、5つめの石が、右肩に当たったところで、死体は、ごそりと動いて、綺麗な茶色の両目で私を見て、「痛い」と、言ったので私は、
 「私、フェルトよ。あなたに会いに来たの」
と、返して、そうしたら、死体は「……刹那だ」って、起き上がりながら言った。
 私は、それで、「せつな、せつな」って口の中で五回繰り返してから、
 「私と一緒。あ、でも、パンダとも一緒。『フェルト』は女の子の名前だからパンダくんって呼ぶね。良い?」
 って、首をかしげたら、けど、パンダ君は、「刹那で良い」と、首を振る。
 「名前なんて滅多なことで呼ぶものじゃないと思う」
 せつな、より、パンダ君のほうが、可愛いとも、思うから、ちょびっと、強めに言ったら、けど、刹那は首を横に振って、「たいした名前じゃないから、別に構わない」という。
 それで私は、つまらなくなってしまって、「そう」って一言だけしか返事をしなかった。
 これが明け方に見る、夢みたいに遠い頃のお話。

(「鳥になりたい私の友達」より)


 「おい!ガキ!」
 がさがさと枯れ葉を踏みながら道を歩いていると、突然声が聞こえた。
 けれど俺の認識の中に俺を表す単語として「ガキ」という言葉は存在しないので、それはつまり、この声は俺を呼んだわけではないという結論になるので、足を止めずに歩を進めようとしたら、着ていたパーカーのフード部分をひっつかまれて強制的に足を止めさせられる。それで仕方なく、「なんだ?」と、出来うる限り迷惑そうに言い、相手の手を振り払おうと右手を動かしたら、今度は右手首をひっつかまれた。
 「なんだ、じゃねーよ。おめぇ、なんだよ、その腕、骨と皮じゃねーか、お前、ちゃんと飯くってんのか?成長期のやつが…」
 俺の右手をつかんだまま、アリー・アル・サーシェスとかいう長ったらしい名前の赤毛の男がくどくど言ってくるので、音声として相手の言葉を認識するのが面倒くさくなり、そういえば、左手の指を一本捨てたことを思い出して、動かしたのが反対の右手で良かったな、などと、別のことを考えていたら、突然、「おいお前聞いてんのか」という言葉とともに、頭をスコンとはたかれた。仕方なく「必要最低限のエネルギーは摂取しているつもりだ」と必要最低限の答えを返す。
 「なんだ、あんたら、知り合いなのか?」
 その返答が気に入らなかったらしアリーが、何か言おうとしたとこに割り込んで、アリーと話していた男が、口を出してきた。声を聞いて、この間海であった男だとわかる。
 「あ。あぁ。昔ちょっと、な」
 アリーが茶化すような、ごまかすような表情で男に返事をし、俺への説教を続けようとしたところで、電信音が鳴る。おそらくは携帯電話のもので、俺のは、電源を切っているから、俺のじゃない。目の前の男どちらかのだろう。
 「と、わりぃ、用事だ。じゃぁな。あ、ロックオンよ、あの約束、忘れんじゃねぇぞ」
 電子音は、アリーの携帯電話の音だったようで。取り出した電話の液晶を確認したアリーはそのまま、それだけを言い残して、歩き出す。
 「そうだ!おい!ガキ!お前、飯食えよ」
 俺へ向かって言った後、電話に出て、なにがしか話し始めたが、その声は低く潜めたものだったので、もちろん聞き取れない。めんどくさい男に捕まったものだ。今日は災難だったな、と思って、思わずため息を吐いた。
 「なぁ、お前さ。説教くさいのが鬱陶しいのはわかるけど。ゲイリーさんはお前のこと、心配してると思うぞ」
 そのまま、歩き出そうかと思ったが、その思ったことを行動に移す、コンマ0.5秒前くらいに、残っていたロックオンとかいうらしい男が、俺に向かって言い出す。
 「だいたい、大丈夫とか言うけど、大丈夫って言うなら、大丈夫って言えるくらいの、見た目しておかないと…」
 すでにアリーの説教だけで、ヘキエキしていた俺は、もう一度、今度はさっきより、わかりやすくため息をつく。わかりやすく、を意識したのは、相手に迷惑だ、という意図を伝えるためだ。
 「あんた、つまらないやつだとは思っていたが、つまらない上に、鬱陶しい男だな。最悪だ」
 そのまま、率直な感想を言い置いて、俺は歩き出した。秋の嵐が近づくにおいがする。

(「ある、一人の人殺し」より)