That's none of your business!
耳元で、赤林が楽しげに囁いた。
弾かれたように見上げた先で、赤林がにまにまと嗜好を崩している。
「今時、あんなスレてない子も珍しいよねぇ」
トントン・と、杖で2度床を叩いて赤林が去って行くのを四木は呆然と見送った。
スレていない
手を出していない
そんな条件に当てはまる女など四木は一人しか知らない
“四木さん”
子供みたいなあどけない顔で四木に笑いかける
自分の仕事を知っているはずなのに、なんでもないよと気にもせず無邪気に懐いてくる
自分を信頼しきったその姿
それに、欲情を覚えたのはいつのことだ
スラリとのびた手足
うつむいた時に覗く項
形のいい耳や、顎に血液が湧いたのは
流行のルージュもグロスも何も塗られていない唇に噛み付きたいなどと思ったのは
“もらっちゃうよぉ”
嘲笑うような楽しげな赤鬼の声が木霊する。
ぐらぐら
ぐらぐら
「だれが、手放すか」
常になく乱暴に吐き出された言葉は、おかしな程低く部屋に響いた。
end