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なんでも一人で出来るから独りなんです

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お前、友達いないだろ。

 シュウの笑いを含んだ声に、テツは押し黙ることで答えた。
 特に友達なんてほしいと思ったことはない。最近、ユキという少女が周りをうるさくしていたが、彼女とは友人ではない。ユキとの関係は、センコが間にはいって初めて成り立つものだ。センコはテツの右腕であり、今センコの操縦権を持っているのはユキなのだ。しかし、そんなことをいちいち説明するのはたいへん面倒であるし、第一、シュウに教えてやる理由がない。それにしても、タイミングの悪いときにシュウに出会ってしまった。件の右腕も今はいない。
 透明になって姿を隠すことの出来るモンスターの中に隠れているのだろう。聞こえてきたのはシュウのやけに癪に障る声だけで、姿かたちはどこにも見えない。偶然テツを見かけて、気紛れに声をかけてきたのだろう。逃げ切れるとは思わなかったが、もしかすると興を削がれ去って行くかもしれないので、テツは声のした場所から真逆の方向へ走った。シュウが追ってきているのか、いないのか、それは分からないが、とりあえず走る。
 足を動かすたびに、制服のシャツの袖がひらひらと翻った。頼りないその動きに思わず舌打ちをする。右腕――センコはユキに呼ばれて行ってしまった。呼ばれた先で何をしているのか。どうせまた甘いものを食わせてもらっているのだろう。どうも餌付けの間隔が近い。しかもテツにとっては意味のないものばかり、ユキはセンコに与える。モンスターをペットのように扱う彼女に不満を感じないわけではなかったが、センコがユキを操縦者と認めている以上、テツに文句を言う権利はないのだ。
 角を曲がる。視界の先、何もない空間が真横にぱっくりと裂け、そこからのそりとシュウが顔を出した。立ち止まり大きく息をつくテツの、揺れる右腕部分を見つめ、シュウはとても気持ち悪い顔で笑った。
 わかりやすくテツを下に見ている目だ。
「僕がなってやるよ」
 唐突に、右腕のなくなった理由を訊ねもせず、くちびるの端を歪に吊り上げて楽しそうに言ってきたシュウに、テツは心底呆れる。コイツ、何言ってんだ。

 僕がお前の面倒みてやる。片腕だけじゃ不便だろ。

 言葉を重ねられても意味不明である。呆然と立ち尽くすテツに焦れたのか、シュウが動いた。ドン。右肩に大きな力がぶち当たる。うまくバランスがとれない体は容易く転がった。何も見えないが、近くにシュウのモンスターがいるのだろう。(センコ……)呼んでみてもセンコが応える声はない。コンクリートに頬をつけたまま、テツはあきらめの息を吐いた。走ったことにより上昇した体温に、コンクリートの冷たさが気持ちいい。
 近寄ってくるシュウのゆったりとした足音を聞きながら思う。
 シュウのほうがよっぽど友達の出来ない性格をしている。