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スマイル御1つ10万円になりまぁす☆

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ありふれたファーストフード店のレジの向こう側、正臣は誰にも聞こえないように息をつき、くるりと足首を回した。
 客の入りは自分がシフトに入ってからはまだあまりない。初めてのアルバイトでどうなることかと思ったが案外平気だったことに彼は静かに安堵した。あの平和島静雄のバイト敗北列伝の中の内の一つだったのが少し気がかりだったのだが。
 少し汚れた店の曇りガラスを通して見える通行人はまばらで、そして不確かだ。そこまで早い時間帯でもないし今日は学校もないのになと彼は心の中で首をかしげ、まぁいいかと脳裏に昨夜叩きこんだマニュアルを思い浮かべる。最初に何を食べるかを尋ねる。セットや飲み物の有無、外で食べるのかお持ち帰りか、それから・・・。
 ふと自動ドアが開く音がして彼は少し眼を動かし、にこりと笑った。

 「いらっしゃいませー・・・?」
 「紀田君」
 「こ、こんにちは・・・」

 見知った友人の姿にくりっと彼は目を大きくして瞬きし、何故か微妙に間隔をあけている二人を見て少し照れたように大げさに笑って言った。

 「俺に隠れて杏里とデートだとーぉ?見せつけに来たのかよ、このこの」
 「ちっちがうよ!これは」
 「まっ残念だったな。デート場所が悪かった。そんなことしても俺の働く姿に杏里の心はラブズッキュン!」
 「古いよ紀田君」
 「でもバイトするとはいったけどよくわかったな?」
 「あ、それは・・・」

 杏里が何か言おうとした時、自動ドアの開く音がした。
 今レジ前にいる店員は自分しかいない。咎められはしないかと少し不安になりながら正臣はまた営業スマイルをはりつけ、ようとした。

 「いらっしゃい、・・ま、せー!」
 「わぁ。その途中から無理やり頑張りました感、嫌いじゃないよ」

 すたすたとその客は何の気兼ねもなくすたすたとレジまで歩き、自然に帝人と杏里の間を通り抜け、颯爽と正臣の前に現れた。
 そして彼はそのまま喋り始める。

 「君がアルバイトを始めたと小耳にはさんでね。これは俺がいかなきゃダメでしょうと思ってきたんだけど、一人で来るのも何だから君のお友達を誘ったんだよ」
 「今日はこちらでお召し上がりですか?それともお持ち帰りで?」
 「ここで。それにしても今思ったんだけど何かそれって卑猥だよね。あぁ睨まないでよ、ちゃんと頼むからさぁ。
  さて、帝人君、杏里ちゃん、電話で言った通り俺のおごりだから何でも好きなの頼んでいいよ」
 「はぁ、でも本当にいいんですか?」
 「うん。情報屋は信用が頼りだからね、一度した約束は必ず守るよ」

 正臣はひきつった笑みを浮かべたまま臨也を睨みつけ、声は出さずに小さく口を動かした。「 う そ つ け ! 」。

 「一人で二人分頼んでも、今日の晩の分まで頼んでお持ち帰りしてもいいし」
 「それは、できません・・・」
 「食べ盛りだし遠慮しなくていいのになぁ。まぁ俺はもう決まってるから、ほら、どうぞ?」
 「じゃあ・・・」

 見つめあっている様子の二人に帝人は首をかしげ、杏里は一触即発の雰囲気にほんの少し困惑しながらメニューを選んでいく。少し軽口を入れながらも他のお客を意識してか正臣が大体マニュアル通りにレジへの打ち込みをすませるのを見ると、臨也は自分がプレートを運ぶので二人に場所をとっておくように『お願い』した。二人がそのお願い通りに店内に散っていくのを見て、再び正臣は臨也に仮面のような笑みを向ける。

 「お客様はどうなされますか?」
 「あのさぁ、実を言うと俺、ファーストフードって嫌いなんだよね」

 その時正臣少年は思った。帰れ。そしてしね。それか二度と帰ってくるな。

 「でもせっかく来たのに何も頼まないのも何だしね。飲み物ぐらいなら飲めるかなと思ったんだけど」
 「シェイクのバニラ一つーMサイズですねー。以上でよろしいですかー?」
 「ちょっと嫌がらせはわかるけどそれはやめてくれる?大魔神を思い出すからさ。
 で、随分迷ってね、俺はあることを思い出したんだよ!」

 にこぉ、と顔全体で笑って、眼だけは真面目に臨也は前に乗り出した。笑顔を張り付けたまま正臣は後ろにひく。

 「店員さんの、」

 情報屋の唇が怪しく動く。





 「店員さんの、とっておきの、こころのそこからの、スマイルを下さい」


 「俺の前から消えてくれたら考えてもいいっすよ」