あのこがほしい
英←セー・露←ベラ前提のセー+ベラ
うつくしい、とおもった。
透き通るような白い肌に蒼のひとみがきらきら光って、海、みたい、って。
きれいなところもそうだけど、あの子のひとみには、そう、海みたいな深さがあった。
一瞬でずるり、と。引きずり込んでしまうような、引力が。
思わず、じいいとそれを覗きこめば、「なに?」、ずるいなあ、そう言うその声さえもまるで硝子細工のような繊細さで、まぁ硝子細工なんてあの人のお屋敷でしか見たことないのだけれど。
何でもないのと首を振れば、怪訝そうな顔をして緩く首を傾げたその仕草に、さら、揺れたその髪の細く輝く様といったら。
きれいきれい、全部きれい、しゃんと伸ばされたその立ち姿もまっすぐな視線も、お人形さんのようなそれから溢れ出る意思の強さが、ただ、まぶしい。
あの人に、似ている、とおもった。
ずるい、なあ。きっとあの子ならあの人の隣に立っても、なんて、こんな逃げ方をするわたしがいちばん、ずるい。
***
うつくしい、とおもった。
小麦色とでも言うのだろうか、健康的に焼けたその褐色は誰から見ても、そう、あたたかそう、そんな印象を与える。
つやつやと光るそのダークブラウンの髪はきっと陽の光を受ければ何色にも輝くのだろう。
両肩に咲くふたつの赤を見ておもう、私にはあれは結えない。
あれは、私には、まぶしすぎる。
向日葵みたい、それをおもった瞬間、ざああと脳をノイズが走った。
ふと、目が、合う。あんまりじいと見つめるものだからあの子のまあるい黒々と光るひとみに映る自分と目が合ってしまい、冷や、と背にほの白い手が這った気がした。
ああ、なんて、私は、色が無いのだろう。
耐えられず首を傾げれば、「いやあ、なんでも!」、ぶんぶんと首を振ってにへらっと笑って見せたその柔らかさといったら。
まぶしい、まぶしい、なんでそんなに笑えるの、別に何か嬉しいことがあった訳でもないでしょうに。
違う、ちがう、違うのだ、あの笑顔が、あたたかさなのだ、そう、あの人が一番、欲しいもの。
私もあの子のように笑えたのなら、そうおもうのに、おもえばおもう程、私の世界は滲んで色を失っていくのだ。
あのこがほしい
(きっとあの子にはわたしの気持ちなんてわからないわ!)