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面倒が愛しいこいごころ

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「日本は、」

すねたような口調で呼ばれて、日本は振り返る。
きれいな金色の髪に隠れそうな青い瞳がきらきらと怒っているように見せながら、子どものように輝いている。
なんでしょう、そういうように首をかしげると、大きな腕が伸ばされてきてその中にすっぽりと閉じ込められてしまった。

「アメリカさん」

困ってそう呼んでも放す気はないらいしく、ますます力を込められて日本は仕方なくアメリカの肩に手を置いた。
少し背伸びをしなければならないほどの身長差がうらめしい。
その格好のまま、耳元でもう一度、アメリカさん、そう尋ねれば、アメリカはようやく口を開いた。

「日本は、いつもそんな顔するんだ。
 俺が好きだっていうと、笑ってるのに泣いてるみたいな。
 鈍いってイギリスからも言われたけど、さすがに気付くよ。なあ、どうしてそんな顔するんだ?」

「……ええと」

日本は抱きしめられたまま、ぱちぱちと瞬きをした。
日本の肩口に頭をうずめた格好になっているアメリカの表情は、日本からは見えない。見えないが、どう聞いてもそれは子どものわがままのような、けれど純粋にかなしそうな声で戸惑う。
どうしたものかと考えて、咄嗟に言葉が見つからず迷ってしまったのがいけなかったのか、さらに込められる力に日本は思わず息をつまらせる。

「あ、の。あなたのことが嫌いだとかその言葉を信じていないわけでは、ありません、ので…」

何だか言い訳がましく聞こえる気が、自分でもしなくもない。
けれどとりあえず力を緩めてほしくて日本は絶え絶えに訴える。
アメリカはしぶしぶ腕を緩め、至近距離にある黒い瞳を見下ろして覗き込む。
日本が見上げる形になった青い空色の瞳は、不満そうでかなしそうで、ほだされてはいけないと分かっていながらも手を伸ばしてしまう。
自分よりも高い位置にある金色の髪に触れて、子ども相手のようにゆっくりと頭をなでた。
言うべきか言わずに置くべきか、悩んだのは一瞬で、日本は、しかたないですね、そう笑って口を開く。

「あなたのことが、好きだからです。
 好きだからこそ、あなたに好きだといわれるとそんな顔になってしまうんですよ」

ええ、何だよそれわけがわからないよ!
そういって盛大にふくれるアメリカに、日本は笑ってとりあうのをやめる。
好きなことにはかわりありませんよ、年寄りをからかうのはやめてください、そう言って笑う。
そうして、心のうちでそっとため息をこぼす。

あなたのことが、好きだからです。
好きだからこそ、どんな扱いを受けてもあなたのことを好きな自分が嫌でそんな顔になってしまうんです。
でも好きだからこそ、あなたに好きだといわれると嬉しくて笑ってしまうんですよ。

ああ、なんと面倒な恋をしてしまったことか。恋とはなんと面倒なことか。
そう考えながら、臍を曲げてしまった恋人の首に腕を回して、日本は珍しく自分からキスをせがむ。
そして、青い瞳にきらきらとした光が戻るのに、また微笑んだ。
作品名:面倒が愛しいこいごころ 作家名:あめ