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飴をあげる

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使いの帰りに偶然見つけた、ショーウィンドウの奥の翠色。
赤い髪の子どもの瞳にそっくりで、気付けば手に取っていた。





飴をあげる





「ガイ、遅かったじゃない。ルーク様が呼んでるの、早く行ってちょうだい」

人使いの荒いメイド長に告げられて、俺はルークの部屋へ急いだ。
今日は朝から、言い付けられた仕事をしていたから、ろくにルークを構っていない。
きっと癇癪を起こしているだろうと苦笑しながら、部屋の戸をノックした。
返事がない。

「入るぞ」

埒が開かないから、断りを入れて戸を開けた。

部屋の中は惨々たる光景を呈していた。きっと物取りだってこんなに酷くは散らかせまい。
後片付けの段取りを頭の片隅で始めながら、こんもりと山になったシーツの樹海へ歩を進める。

「ルーク」

あやすように名前を呼ぶと赤い髪のおばけがぴょこ、と顔を出した。
手触りの良い紅糸を掻き分けて、顔を見る。
目も頬も鼻の頭も、どこもかしこも真っ赤だった。

「泣き虫」

目尻に残る涙の後を拭ってやれば、触んな、と生意気な口を利いた。
人から与えられる温かさを振り払えない癖に。

「お前があんまり泣くもんだから、瞳が溶けて零れ落ちちまった」

ほら、と掌を開くと翡翠の玉がひとつ。
ルークはそれこそ本当に零れ落ちてしまうのではないかと思うくらいに目を見開いた。
ぽかんと開けたままの口にそれを含ませてやる。

ルークは恐る恐る味わい、甘さを感じると頬をゆるめた。

「おいしい…」

「土産だ。まだたくさんあるから、全部お前にやるよ」

「本当か?」

「あぁ。ただし一日に何個も食べたら駄目だぞ。歯も磨けよ」

「うん」

にこ。
ルークが微笑む。
機嫌は治ったようだ。
手慰みに髪を梳くと子猫の様に戯れるのが可愛らしかった。

「お前が望むなら、いくつだってくれてやるさ」

ルークに聞こえないようそっと呟く。


甘く甘く、砂糖に漬け込むように与えるそれは、歪な形の愛だった。
作品名:飴をあげる 作家名:うな重