Romanの夢
「ごめんなさい・・・
ごめんなさい・・・イヴェール・・・!」
赤かかった茶の色の髪を振り乱し
母となるはずだったその女性は
墓の前に膝をついた
女性の名はコレット・ローラン
墓前に供えられた双子の人形を抱きしめ
生を与えられなかった我が子に許しを請う
誰として、彼女を責める者はいないというのに。
「・・・っ、嗚呼・・・
もしこの声が届くならば
イヴェール・・・」
"生まれてきてくれて、ありがとう"
緋色の宝石を前に
Hiverはガラステーブルに肘をついた
この場所に戻ってきた自分の物語を、観ている。
それが、己が生を受けるに至る世界であったのか
その答えを捜し続けているのだ。
"母"の声を聴きながら
Hiverは目を細めて
とても細く小さく
呟いた
「・・・聴こえているよ、Mere」
誰かに届くこともなく
その声は一瞬にして空に消えてしまったが
きこえるはずがないと解っていながらも
声を掛けたくなる己に
Hiverは微笑んだ
もし、母の言葉を返せるとすれば
こう言うのだろう
"生もうとしてくれて、ありがとう"
――其処にRomanはあるのかしら?