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きいろのうた

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嘯くように一握り、幸せとカナリアは旅立つ






開け放された窓
飛んでったカナリア
僕はもう 夢を見ない

(そして世界は 暗転 す る)





僕の部屋には一匹のまるで人形のように美しいカナリアがいた。彼女の名をつけた鮮やかで賢いカナリアは昨日、僕の部屋を旅立った。無言の巣立ちだったため、今のところ帰宅予定は無い。もちろんストップウォッチも止めていない。開けたままになっていた何処までも偽者に青い空。(お前は一体、そこに何を夢見た?)手に入れたような気でいた曖昧な幸せを ── 僕という名の虚構を ── まざまざと見せ付けられたようで酷く気分が悪かった。

彼女は先程から上の空だ。碧空に突き抜ける何処までも限りなどないかのように。彼女は空が好きだった。空が彼女の夢だった。── 僕は飛び去った黄色を激しく後悔している ── 彼女がただの幻なのか、どうなのか。僕はそれが怖い。
(いつか幻にされるのは僕なのかと、)

それから幾ばくかが過ぎて、腐ったように膿んでいる傷口を晒すこともなく黙っていると、彼女はあるとき突然微笑んだ。まるでその微笑みが僕に対するはじめてだとでも言うように。
「私の部屋に、黄色い鳥が迷い込んだのよ、まるで貴方ね、」
一瞬左耳を掠める羽の擦れる音。右の目にまざまざと映し出される儚く気高い彼女。
「名前は石蕗、そうつけたの」
ああ、ああ、七実さま。僕はその黄色に貴方の名を。
「七実様、黄色い鳥はカナリアと言うのです」


幻の彼女は ── 嘯きの僕は ── 今日、飛び立つ。






僕は幼かった彼女も過去も、
黄色い欠片も知りはしないけれども。

飛び去った黄色に、
一握りの幸福を願う(空はやはり偽者の、)

(そして世界は 二 度 暗転 す る)
作品名:きいろのうた 作家名:しょうこ