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supica

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大袈裟に言うと、2万と2456回目の激情。つーかあんた片付ける気あんのって、そういう問い掛けに元希さんは大概やる気なさげにさあ、とか知らねえよなどと言った。呼ばれるがままに適当な家に転がり込んではやっぱりここしかないと帰ってくる俺も俺だけれども、部屋を片付けられない元希さんも元希さんだ。一週間ぶりに帰宅した俺を待っていたのは馬鹿みたいに重ねられたコンビニ弁当のゴミと、飲みかけのペットボトルとパックの山だった。
「そこの四角いのは何、」
「あー・・・多分牛乳の残り」
お前一々面倒臭えよ。牛乳としての原型なんかとっくに残っちゃいない物体をしかめっ面で眺める俺の背中を、元希さんはだるそうに抱きすくめた。元希さんが好きだと言った黒を、今日も俺は何だかんだで着ている。元希さんの鼻先が俺の首筋に埋まるのがくすぐったくて、嫌ですよ、と俺はそれを引き剥がした。
「お前さ、なんなの」
「なんなのって、何がですか」
「お前本当に面倒くさい。お前がどっか行く度にもう帰ってこなきゃいいのにって思う」
「そりゃ残念でしたね。俺ももうここには帰ってこないって毎回思ってますけど」
あーいえばこーゆう。俺たちはそんなことの繰り返しだ。それでいいと思っていた。だから元希さんはここも、服も、愛も、セックスも、みんな用意してくれる。俺が好きな分だけ元希さんも俺を好きだと、そんな単純な思考回路で生きていた。
「お前ちゃんと高校行ってる?」
「元希さんと違いますからね、学校じゃこれでも成績優秀頭脳明快容姿端麗で通ってますよ」
「漢字ばっかり並べて気色悪ぃ」
「・・・煩い人ですね、早く隆也って呼んで下さいよ」
「何だよ、さっき自分で拒否ったくせに、」
それでも元希さんは待ってましたとばかりに俺を押し倒す。少し伸びてきた元希さんの髪の毛が俺の胸の辺りでざわざわとするのを静かな気持ちで眺める。あまり暴れると机周りのゴミが降ってきそうだ。(ああ、なんと汚い光景!)着ていたシャツの釦を綺麗な細い指がちまちまと外す。そうして器用に今度はズボンのチャックを元希さんの前歯がおろした。
「なあ、何で俺が黒いの好きか教えてやろうか」
「っ、」
「黒がこの世で一番セックスらしい色だからさ」
「この・・・や、ばん、人っ」
じゃああんたの瞳は常にセックスの色だ。色情魔、とは言えなかったけど。元希さんが一思いに俺を突いた拍子にやっぱり思ったとおり、ゴミの山は元希さんの頭を直撃した。痛い、とは呟いたものの実際にはそこまで痛がっているふうでもなく、寧ろ行為に集中していた。俺の足元に最終的に転がったゴミを見て、ああ酷いな。そう言ったのは俺だった。脆く築き上げたものは長く続かない。これはきっと俺よりもずっとここで生活を送っている元希さんが一番理解しているのだ。
「くずれる、」
白くスパークする寸前の俺の濡れた瞳は、もう一つのゴミの山が崩れるのをはっきりと確認した。

23回目のコールで俺は元希さんに電話をするのを止めた。30日が過ぎてから俺は元希さんの連絡先00を全て消した。元希さんはあのセックスを最後に俺の前から姿を消した。部屋の鍵は置いてあった。元希さんの荷物は元よりなかった。(どうして、帰ってきてすぐにそのことに気付かなかったのか)
あの人が消えてから片付け始めた部屋は、そこら中に " 隆也、愛してる "。そんなような内容のメモ書きばかりだった。(書き残すくらいなら、)(はじめから・・・)
もう言葉は返せない、届かない。俺も、は遅すぎた。俺はベランダにメモ書きを全て持って出ると、それを一枚一枚丁寧にライターで火をつけて燃やした。風と共に飛び去ってゆく愛の言葉を宙ぶらりんに眺めながら、俺は初めて元希さんのことを思って泣いた。
作品名:supica 作家名:しょうこ