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編入するにあたって、クラスは俺が選べることになっていた。もちろん円堂やほかのメンバーのクラスも聞いていたが、俺は迷うことなく円堂とは別のクラスを選んだ。
朝、校門の前で一緒になった豪炎寺が意外そうな顔をするので、俺はそのことの方が意外だった。
「…何故そんな顔をする」
「あ、や…円堂と同じクラスの方がお前も楽しいんじゃないかと」
ああ、そうだな。俺は豪炎寺の顔を見ずに返事をした。
「俺は円堂の面倒を四六時中見る自信はない」
一瞬固まった豪炎寺が、そのあと破裂せんばかりに大笑いした。俺が面くらっていると、
「それはもっともだ」現実をよく見ている、と何故だか褒められた。

昼をどこで食べようかとふらふら廊下に出た俺を、円堂は少し恨めしそうな顔をして捕まえた。無言で弁当箱を差し出して、「飯!」 命令に近かった。俺は気押され、無言で円堂の背中を追った。雷門の校舎を反対側に抜けたところに、丁度正午にぴったり日当たりが良くなる芝生があった。晴れている日は大体ここで昼を食べているらしい。円堂がどかっと腰をついたので、俺もその横に座った。無言で弁当箱の包みを開く円堂に釣られて俺も弁当を広げる。今日のおかずは大きな海老フライだ。タルタルソースには自信がある。気がつくと円堂が物欲しげに俺の弁当を覗いていた。自分の欲望には直球な奴だ。
「いるか」
俺からの提案に円堂は極めて微妙な表情を返した。初めに本当か、とまるで犬のような華やいだ笑顔を見せ、次にやっぱり申し訳ないと言う顔をしてみせる。しかしやはり欲しいらしく、恥ずかしそうに小さく、「ちょうだい、」と言われた。俺は無言で円堂に弁当箱を差し出す。円堂は見返りとして黄色いふわふわした卵焼きを2つくれた。
「俺、怒ってたんだぞ」
円堂が箸を止めてそう呟いた。俺は一瞬あっけに取られ、箸を置いたが、すぐにまた持ち直した。
「知っている。お前の態度はわかりやすいからな」
だが、とそこまで言って俺は言葉を切った。円堂が続きを無言で促す。
「何を怒っているのか、そこがわからない」
困った、と俺はゴーグルを持ち上げる仕草をする。
「クラス、何で俺のところにしなかったんだよ」
「は」
「俺は同じクラスで、同じ空気を吸って、楽しく鬼道と勉強したかった!」
円堂は言いながら弁当のプチトマトを掴もうとしているのだが、上手くいかずに何度も落としている。諦めたようにその行為を止めた後、円堂は今度こそ箸を置いた。
「好きな奴と同じクラスになりたいなんて、当たり前だろ?」
「円堂、」
ありがとうと言いかけて、やめた。チャイムがあと数分で鳴る。まずは目の前の弁当を片さなければならなかった。

放課後になってようやくあの言葉の真意を考えたが、円堂が無意識にしろなんにしろ好きな奴と形容した事実は自分一人のものにしておきたくて豪炎寺にも黙っていた。
「何かいいことでもあったのか」
豪炎寺が怪訝そうに俺の顔を覗き込む。
「わかるか」
「表情は違わないけど、なんとなく」
「ちょっとは面倒をみる気にでもなったとでも言っておこう」
はあ、と曖昧に返事をした豪炎寺の前を、マントを翻して後にした。俺は案外早く馴染めるのかも知れない。
作品名:Start 作家名:しょうこ