エバーホワイト
ほら、雨だ!
光也はまるで今まで見たことも無いような珍しいものを見るような目で外の世界を指差した。指先に、つん、と雫が落ちる。(馬鹿騒ぎをして・・・)頬杖をついた俺は、ふああと欠伸をして、目を細めた。
雨ごときで何をそんな、
に、と言葉を繋ごうとして俺はそのまま諦めてしまった。光也は、黙って雨に濡れていた。只、それだけのことなのに、
(白いシャツが、光を跳ね返している・・・)
みつ・・・お前・・・綺麗、だ
何だよ、と顔を背けた後、少し、俯き加減に、光也はありがとう、とそれこそかすれてしまいそうな声で云った。え、今なんと、と聞き返したがそれ以上は何も答えてはくれず、黙って雨と戯れていた。
似ていた。
俺は一瞬息を呑む。それはあまりにも似ていたのだ。光也が祖父と呼ぶ慶光に。
雨は、全てを隠してくれる。
そう、なにもかも。
ふと、慶光がそんなことを云っていたのを思い出す。思い出の中の、ぼんやりとした、優しい慶光。お前は、何を俺から隠したかったのかな。
雨は、酷く穏やかだ。