二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

夜遊びしませう?

INDEX|1ページ/1ページ|

 
かちゃん、と仁が眼鏡を外して、とうとうその常緑瞳を遮るものは何も無くなってしまった。ゆっくりと上げられる顔、そして、瞳。瞳がやんわりと、俺の視線と交わる。



(仁は、本気なんだ)



仁の瞳は、まごうことなき真実の瞳をしていた。彼は、きっと俺を手に入れるつもりなのだ。俺の唇が微かに動いた。しかし、俺が何かを云う前に仁はとっとと俺の口を塞いでしまった。



「仁、」「五月蠅い」



俺の唇に、吸い付きながら、彼は俺を見下した。ああ、そんな目で見るなよ。自己嫌悪だ。俺は本当は仁に抱かれたいと思っている。なのに、如何しても慶光の影がちらつくのだ。結局お前の瞳に写っているのは、俺と慶光と、一体どっちなんだよ? 心が、体のいい代用品にはされたくない、と叫んでいる。



こあい、と俺は蚊の鳴くような声で云った。仁が唇から離れて、怖い? と聞き返す。目を一回瞬かせれば、出てきたのは紛れもない涙で。(こんなにも仁の境界線が曖昧だったのはこいつの所為だったのか)



「なんだ、泣いているのか」



仁はそれが何でもないことのように、そっと人差し指で俺の涙を拭った。ほら、見て御覧、お前の涙だ。綺麗だろう? やや挑発的に微笑んだ彼は、そのまま俺をぎゅうと抱きしめた。その抱擁は、痛かった。棘のように、痛かった。俺もあまりの強さに思わず抱き返してしまう。仁が、耳元で囁いた。



「本当は、こんな風に乱暴に抱きたくなど、なかった」



それは明らかに後悔と取れた。

俺はただただもうひたすらに仁が憐れで、先ほどの気持ちなど微塵も消えていた。仁、仁、と名前を呼んで、顔を合わせたら、俺から口付けを落としていた。仁の瞳孔が、一瞬、大きく見開かれ、次の瞬間には光悦に変わっていた。



「光也、お前」



嗚呼、彼は、俺を光也と認識しているのだ。もう、それだけで構わないと思った。今度生まれ落ちる涙は本物だと思う。歓喜の、涙。



「もう、抱きたいなら抱けばいい!」



俺は、小さな叫びのようにそう宣言した。愛している、という言葉はまだ取って置こう。
作品名:夜遊びしませう? 作家名:しょうこ