コウノトリ
「・・・山田さん?」
相馬は、腕をくんで唸っている山田を見て、不思議そうに話しかけた。
「むうううううううううう」
相馬の呼びかけにも気付かず、山田は唸り続けている。
相馬は少しむっとして、山田の髪の毛を一房つかんで、引っ張った。
「い、いたああっ!だ、誰ですか!?」
「何考えてたの?」
ようやく相馬のほうを向いた山田。
相馬はにこっと笑って尋ねる。
「そ、相馬さん!ひどいじゃないですか!山田一生懸命考えてたんですよ!?」
ちょっと涙目になって訴える山田はとてもかわいらしかった。
「ごめんごめん。で、何考えてたの?」
山田が相馬に気付かずに考え事をしているなんて珍しい。
相馬はへらへら笑って山田の頭をよしよしと撫でる。
「・・・・赤ちゃんは、どこからくるかについてです!!」
真剣な表情で答える山田を見て、相馬は思わずむせた。
「ご、ごふっ・・・」
「相馬さん?どうしたんですか?」
山田は相馬の顔を覗き込んでくる。
相馬は手で口を押さえながら、ごほごほし続ける。
「じ、持病の癪が・・・ね・・・。(なに考えてんのこの子――――――!)」
「そ、そうですか・・・大丈夫ですか・・・それでですね。山田考えたんですけど」
相馬を気にせず話を続ける山田。
相馬は、山田の口から次は何が飛び出してくるのかとびくびくしていた。
「赤ちゃんは、コウノトリさんが運んできてくれるらしいんです!!!」
ばーん!と効果音がつくように、自身満々で答える山田を見て、相馬は笑いを堪えるのに必死だった。しかも山田はかなり真剣なのだ。
「や、やまださん・・・あのね・・・?」
「なんですか相馬さん!あ、その顔は初めて知った顔ですね!山田も相馬さんも、コウノトリさんが北海道に運んできてくれたんですよ。」
相馬はお腹が痛すぎて身体をふるふる震わせる。
ああ、なんてこの少女はこんなにも愛おしいんだろう。
「・・・・山田さん」
「なんですか?」
きゃるんとした瞳で相馬を見る山田。
どうしてここまで素直にホラ話を信じられるのだろう。
将来が心配である。
「僕が、ちゃんと教えてあげるからね。」
「はえ・・・?何をですか?」
山田は相馬の言葉に首を傾げた。
「うーんと・・・・子供の作り方?」
「??????」
やはり首を傾げる山田。
相馬は山田の耳元で囁いた。
「夜、楽しみにしててね。」
山田はその夜、一つだけ大人になったのであった。