ブルーエメラルドとグリーンサファイア
時々無性に恋しくなる。海と空の一番綺麗なところをくり抜いたようなブルー。
灰色の曇り空では見えないし、海岸に立ってみてもその青は何処にもないんだ。
瞼を閉じて記憶の中のその色を思うけど、やっぱり実物が見たい。
その輝きはまるで宝石のようで、きらきらと輝く何よりも大切なもの。
君のその瞳の色がとても好き。
ふとした瞬間すごく恋しくなる。森の新緑と若葉みたいな瑞々しいグリーン。
季節が過ぎれば木々の緑は消えるし、葉も成長すれば色が変わってしまう。
目を閉じて思い出の中のあの色を探すけど、やっぱり本物を見たい。
綺麗なあの色はまるで宝石のようで、ぴかぴか光る眩しいもの。
久しぶりに会うとまず、じっと瞳の奥を見つめてみるんだ。
求めていた色を脳裏に焼き付けておくために。
本当はそれこそ穴があくほど見つめていたいのだけど、
さすがにそれはできなくて気付いたらどちらともなく目を逸らしている。
そして全然関係のない話をして、何事もなかったかのように別れる。
胸の内ではその眼の、せめて片方だけでも。奪えたのならいいのにと思いながら。
だけど宝石は簡単に手に入らないからこそ美しいものだ。だから別に触れられなくてもいい。
(だってそうだろう)
(きっとそうだ)
この汚れた手で触れてしまえば、あの色はくすんでしまうかもしれない。
だから触らない。だから触れない。
きっとあの宝石はあの瞼に守られているから輝くんだ。
だから奪わない。だから奪えない。
欲張りな俺たちが欲しいのは宝石だけじゃないのだから、ね。
あぁ。でも、もしかしたら。
俺はサファイアの見過ぎで、俺はエメラルドの見過ぎで、
瞳の色が変わっているかもしれないね。
なんて、それって素敵なトレードかもしれない!
作品名:ブルーエメラルドとグリーンサファイア 作家名:しつ