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ひぐらしのなく頃に 壊 姉探し編

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第七話





昭和58年、6月。天城家は夕食のあとの家族団欒のひとときを過ごしているところだった。


夫婦二人はソファーに座り、杏菜と名付けた5歳の少女は床でお人形と戯れていた。


つけっぱなしのテレビは取るにたらないニュースを淡々と流し続ける、 BGMの役割を果たしていた。




「なあ鈴子、ウチの事務所も安定してきたことだしさ。」


「なあに薮から棒に。」


「今度一緒に休暇を取らないかと思ってさ、いや一時休業かな。」


「あらあら、ウチの事務所のトップツーが休暇のために休業だなんて、皆怒るかもよ〜?」

「その分皆も休暇になるんだ、誰も咎めたりはしないさ。契約先には怒られちまうかもしれないけどね。」


「休暇でどこへ行く気なの?杏菜と遊園地にでも連れて行ってくれるつもり?それとも海?着る水着なんてないわよぉ。」


「はははっ、どこでもいいよ。行きたけりゃ山でも海でも遊園地でも。」


「じゃあお化け屋敷がとびきり怖い遊園地にでも行きましょうか?ねえ杏菜〜。」


「お父さんお化け屋敷嫌い。お父さんお化け恐がり。」


「おいおいおい、勘弁してくれよ・・・せっかくの休暇がお化け屋敷じゃ台無しだよ〜。」


「あら?私は怖いお化け屋敷のある遊園地に行こうって言っただけで、別にお化け屋敷に入ろうとは言ってないわよ?」


夫は妻の悪い冗談に少しだけ怒り、家族二人は父親が慌てる様を見て笑っていた。その風景はアットホームと言って差し支えのない、美しい家族の風景であった。




「・・・・・・・・・・で○○人が軽い怪我を負いました。事故の原因は不明です。次に緊急のニュースが入ってきました。鹿骨市雛見沢村で大規模な・・・・・・・・」




テレビに流れてきたふとした単語に夫が反応し、試しに夫はその単語を提案の一つとして口に出してみた。




「雛見沢とかどうだろう。鈴子が昔いた地域だろう?里帰りでもしてみるってのはどうかな。」


「雛見沢ね・・・・・・・・。」




天城鈴子の両親は他界して久しかった。里帰りと言うのは親の元に返るということではなく、本当に字面通りに「郷里に帰る」という意味なのだろう。
だが鈴子の反応はいいとは言えないものだった。




「ああ・・・・えっと。」


「んまあ、ただいい思い出はないって訳じゃないのよ。悪い思い出があるだけで、うんそうね、あそこは空気も綺麗だし、神社からの風景もすっっっっっごく綺麗だし、お弁当でも持って行きたいわねー。杏菜にもあの景色を見せてあげたいわ〜。」


「うん、そうだね。すごくいいところなんだろうなぁ〜。」




鈴子は一度離婚を経験している。元夫と別れたのはこの地だが、結婚したのは雛見沢だ。いい思い出はあるが、同時にあまり思い出したくない思いでもあるのだろう。鈴子のこの発言は、未だに吹っ切れていない過去を持っているという白状と、そして雛見沢に行くことで吹っ切ろうという決意の表れだったのだろう。




「・・・・ていうか。」




ここで鈴子は重大なことに気付いた。




「なんでテレビで雛見沢が?あんななんにもない場所を。」


「・・・・・・えーーっと・・・・。」


「なにこれ・・・・・・大災害・・・・火山性ガス?」


「ガスが噴出したってことかな・・・・雛見沢に火山ってあるんだっけ?」


「んーーーーあの山は火山だったのかな・・・・・。」


「・・・・・これじゃあ当分行けそうにないねえ。」




場はガッカリとした雰囲気になってしまった。そんな空気は露とも知らず、鉄の箱の中のキャスターは淡々と喋り続けている。




「・・・・・・のガスは一夜にして村内全てを覆い、村人を全て死に至らしめた大災害となってしまいました。被災者のご冥福をお祈りいたします。ついては被災者の方々の名前をお送りしたいと思います。」




キャスターがそう言うと画面は村を背景にクレジットだけの質素なものに切り替わった。しかしコレはクレジットではなく被災者のリストだ。同じ名前の列でもここまで厳かな雰囲気が出るのには驚きだった。
キャスターは本当に淡々と被災者の名前を読み上げていった。村民の人数はおよそ2000人。2000人もの名前を挙げ続けるのは並のキャスターの仕事じゃないだろう。鈴子達はキャスターに同情しながらも目は画面に釘付けだった。




「知ってる人いる?」


「うん・・・・このお爺さんは八百屋をやってた人だなあ・・・・この人はよくお野菜をくれた・・・・知ってる人が死んじゃうのって悲しいね。」


「そうだね・・・・・・。ん、・・・この名字って・・・・・・・・・・・え?」


「え、何、誰かいたの?」




二人は気付いてはいけないものに、気付いてしまった。








       竜宮四郎

       竜宮礼奈








「え------------------------------なんで-----------------------------------」




「ふ、二人は雛見沢に帰っていたのか?・・・・な、なんで・・・・そんな・・・・・。」




「なんで------------------------------------------------礼奈が-----------------------------------------え----------------------------------------------------------------」





「おとーさん、おかーさん、おねえちゃんがどうかしたの?」





「いや、杏菜、礼奈ちゃんは・・・・・・・・・・・。」