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子犬とうさぎのワルツ。

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「ギルベルト、聞いて欲しい事があるんだ!」

 高校からの帰り道、待ち伏せしていたらしいアルフレッドに道を塞がれ、ギルベルトはぱちりと瞬きをした。

「おいアルお前、学校が終わってからずっと待ってたのかよ」
「そうだけどアーサーには関係ない話なんだぞ! 俺は今ギルベルトと話をしてるんだ」

 だってよ。と明らかに不機嫌そうな視線を向けられ、ギルベルトは困ったように眉根を寄せた。アルフレッドは友人であるアーサーの従弟だ。
 以前学校帰りに家に寄らないかと言われ、遊びに行ったアーサーの家でアルフレッドと出逢った。人見知りをしない性格のアルフレッドに懐かれるまでそう時間もかからなかった。
 なぜ従弟がアーサーの家にいるかと言えば、アルフレッドの両親は考古学者らしく、家に滞在する期間の方が短い。小学生の子どもを現地に連れて行くわけにも行かず、己の姉であるアーサーの母に預けられたのだとギルベルトは聞いた。
 そんな事情を聞いてしまえば、また遊びに来て欲しいんだぞ、というアルフレッドの可愛らしいお願いを無下にはできない。結果、かなり頻繁にアーサーの家に遊びに行ってしまっていた。
 迷惑なら止める、と言ったこともあるが、アーサーの母も、アーサーもむしろ助かっている、と言う。ならば、と此処のところ高校から帰る時には必ずアーサーの家に寄るようになっていたのだ。
 だからこそ、ギルベルトは不思議に思う。なぜわざわざ帰り道で待ち伏せしていたのか、と。

「アル、その話ってのは家じゃ出来ないのか?」
「家でしたらアーサーとおばさんが困ると思うんだぞ」
「おい、そんな話を道ばたですんなよ。それこそ家でしろよ家で」
「あ、アーサーには用事ないからとっとと帰っていいよ!」

 なんだよそれ!? とアーサーが声を張り上げるが、アルフレッドは無視する事に決めたらしい。
 こっちに来て欲しいんだぞ、とアルフレッドに引っ張られ、ギルベルトはその後をついて歩く。俺は知らねーからなばかぁ! とアーサーが後ろで叫んでいたが、有無を言わさぬ様子でアルフレッドが歩くため、ギルベルトはアーサーに声をかける事も出来ずどんどん前に引っ張られてしまう。

「お、おいアルフレッド、お前どこまで……」
「すぐそこまでなんだぞ」

 だからもう少し、と言うようにぎゅっと手を握りしめられ、ギルベルトはそれ以上何も言えずに大人しくアルフレッドの後について行く。辿り着いたのは公園だ。
 更にこっち、と引っ張られた先はジャングルジムで、アルフレッドはギルベルトの手を離すとひょいひょいとそれに登り始め、おおよそギルベルトと同じ位置になったところで動きを止める。

「やっぱり告白するのに俺の方が小さいんじゃつかないからね!」
「……へ?」

 告白。白状し、告げる。何を、ということではあるがこの状況の場合、連想される事と言えば。

「俺はギルベルトの事が好きなんだ、恋人になって欲しい」

 という、告白だろう。

「こい、びと?」
「そうさ! ただ単に好きって言ったらありがとう、で済まされちゃうだろ? 俺は君の恋人になりたいんだ」
「……なあ、アルフレッド」
「なんだい?」
「俺たち、男同士なのわかってるか?」

 真顔で問いかければ、アルフレッドはなんだいそんなことか! とけろりと笑ってみせる。

「そんなの分かってるさ、最初から。じゃなきゃここまで一目を憚る必要もないだろう?」
「男女でもこの年齢差は憚ると思うぜ……俺とお前、五つも違うんだぜ? しかも、高校生と小学生。犯罪だろ」
「俺の方が迫ってるんだから犯罪もなにもないじゃないか。それよりちゃんと答えてくれよ。俺、まだ君の答えを聞いてないんだぞ」

 鋭いところを突かれ、ギルベルトは思わず黙り込む。冗談で言っているのではないだろう、ということはアルフレッドの様子からわかるのだ。というより、そもそも冗談を言うようなタイプでもない。

「……お前の事は、嫌いじゃねえよ。けど、恋人とかって言われると考えた事もなかったしだな……」
「告白したこと、気持ち悪く思ったりはしなかったのかい?」

 アルフレッドもやはり小学生だ。己をじっと見つめる瞳から不安を感じ取り、ギルベルトは微笑ましくなってくすりと笑う。

「それはねえよ。好かれんのは嬉しいと思うぜ。俺はお前の事好きだし」
「ホントにかい!?」

 じゃあ両思いだね! と嬉しそうに笑ったアルフレッドに嫌な予感はしていたのだ。次の瞬間、視界いっぱいにアルフレッドの顔が広がって、あ、と思った時には小さな唇が触れていた。

「あ、アルフレッド!」
「俺が君の事を好きで、君が俺の事を好きなら両思いだね! それじゃあギルベルト、また明日!」

 あ、おい、こら! というギルベルトの制止すら聞こえていない様子でアルフレッドは手を振って公園を去って行く。残されたギルベルトはただぽかんとして、まだ微かに感触の残る唇に触れる。

「……どうすんだよ、俺」

 好きは好きだが、アルフレッドのいう好きとは意味が違うのだ。それを説明し損ねたギルベルトは頭を抱え、小さく呻いた。
作品名:子犬とうさぎのワルツ。 作家名:やよい