Kiss me, one more time...
「委員長。山本武が何者かにやられたそうです。現在並盛中央病院にいると…───」
草壁の言葉を聞いて、頭の中がめちゃくちゃになった。
信じたくなくて、人違いだと思った。"山本武"なんてどこにでもいそうな名前だ。人違いがあってもおかしくはない。
「野球部の部室が血の海でした。かなり出血が酷かったようです」
出血。出血多量で人は死ぬ。
場所によるけれど、ところによれば即死だ。
「委員長?大丈夫ですか?」
「何が……っ?!」
鉛筆を握る手が震えていた。手を押さえても止まることはなく、書類に鉛筆の跡が残される。
「…大丈夫だよ」
「しかし委員長」
「黙ってくれるかな」
「……委員長、書類でしたら我々がやっておきます。自宅に帰って休まれたらいかがですか」
そうだ、きっと疲れているんだ。だから、幻聴が聴こえているんだ。
そう自分に言い聞かせるしかなかった。
僕は応接室から出て愕然とした。
山本が、いなくなったら…?
――――考えたくもなかった。
「僕より先に死ぬなんて許さないから」
並盛中央病院と言ったか。
今の時点ではきっと、いつもの草食動物たちがいる。
ならば僕は、山本をこんな目に遭わせた弱い草食動物たちを咬み殺しに行こう。
咬み殺しに行ってから、僕は君に会いに行く。
お伽話のように口づけで目覚めるのなら、何度でも口づけよう。
だから、どうか生きて…───
────君のいない世界など、生きるに値しないのだから。
作品名:Kiss me, one more time... 作家名:浅田璃眞