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手紙

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貴方が出て行ってから随分と日が経ちましたね。
その月日を数える事は意味がないのでもう随分前にもうやめました。
時が経てば経つ程、それでも色褪せない貴方の姿が記憶の中に鮮やかに思い描かれては、離れている月日の長さの分だけ貴方に逢えない寂しさが募るだけという事に気付いたから。


Lの死、そして貴方が出て行くという事件の後は特に大きな出来事も無く何の変化も無いこの施設では平穏を絵に描いたかの様に相変わらず季節だけが巡ってゆきます。
貴方が居なくなってからというもの日々は急速に色を失い、ただぼんやりと過ぎ行くようです。
そしてこの頃の私にはその変りゆく速度が果たして目まぐるしいのか、それともゆっくりなのかそれすらももうよくわからなくなっているのです。


貴方が今頃何処でどんな風にして生きていっているのか、外の世界で生活してみた事の無い私には皆目検討も付きかねます。
ただ、頭も良く要領も良い貴方の事ですから、きっと色んな事を上手くやってのけている事でしょう。
そのいきいきとした貴方の姿だけは容易に想像がつきます。
便りが無いのが元気な証拠だというのなら、下手に消息なんて知れない方がいいのかもしれません。


それでも、どんな時も強かな貴方のその虚勢の下に隠された脆さばかりを気にかけてしまうあたり私は、もしかしたら貴方の事に関しては自分が思っている以上に相当な心配性かもしれません。







それにしても一体どうしてなのでしょうか。
貴方といい、尊敬するLといい私が大切な感情を抱いたものたちが皆私の傍から離れ、手の届かない所にいってしまうのは。


泣き言めいた事ばかりを言っても仕方が無い事は勿論わかっています。
貴方がLの仇を取るための強く美しい決断を私も尊重しなければなりません。貴方が独断で動いてそのただひとつの答えに辿り着こうとしているのと同じ所にいつか私も自分のやり方で必ず往きます。
L――それだけが私と貴方を繋ぐ糸だと信じて。



そして、もしも願う事が許されるのなら。




願わくば―――

もう一度その笑顔に逢いたい、美しい貴方の
その太陽の様に眩い金色に輝く髪に、白い頬にしなやかな腕に触れたい。



そう願うのはあまりにも高すぎる望みなのでしょうか。





もしそれすらも叶わぬというのならば、せめて







その変わらぬ面影のままに笑っていてくれます様に。
そしてどうか生きてください。


たとえどんなに遠く離れても私はいつでも貴方の事を想っています。
貴方が道に迷った時も、孤独や罪悪感に苛まれる時も、いつでも―――
貴方が暗闇で立ち止った時には足元を照らす月の光になれたら。
貴方が悲しむ時にはその悲しみを癒す道端の一輪の花になれたら。
そうやっていつでも、貴方を想います。あなたの幸せを遠くからでも祈っています。


私のこんな想いを貴方はきっと知ることはないでしょうね。



逢えなくとも貴方が無事に生きていると信じる事だけがこの日々の中で今なお私を生かしている糧なんです。そう言ったら貴方は大袈裟だと笑うでしょうか。伝えられない想いを抱き続けて生きて行く事は不毛だと、そう言うでしょうか。
でも私にとってただひとつ揺るがない真実があるとするならば、それは紛れも無く、貴方と過ごしたあの日々の記憶なのです。






どうかお元気で、私の愛する人
作品名:手紙 作家名:仮初